サード・ワールド『ラヴ・アイランド』

サード・ワールド『ラヴ・アイランド』
サード・ワールド(Third World)『ラヴ・アイランド』(You've Got the Power)

『You've Got the Power』(ラヴ・アイランド)は、ジャマイカのレゲエ・バンド、Third World(サード・ワールド)が1982年にCBS Recordsからリリースしたスタジオ・アルバムです[1][5][6]。

Third World『You've Got the Power』のコンセプトと制作背景

本作は、サード・ワールドが持つレゲエを基盤にしながらも、ソウル、ファンク、ディスコ、R&Bといったアメリカ黒人音楽の要素を大胆に融合させた「レゲエ・フュージョン」の代表作であり、グローバルな音楽シーンへの橋渡しを意識した作品です[2][10]。

バンドはもともと伝統的なルーツ・レゲエにとどまらず、多様な音楽的バックグラウンドを持つメンバーによって構成されており、クラシック音楽やゴスペル、現代的なブラック・ミュージックの影響を受けていました[3][10]。サード・ワールドの音楽的な実験精神と、社会的・精神的なメッセージ性が本作にも色濃く反映されています。

音楽性とサウンドの特徴

『You've Got the Power』の最大の特徴は、レゲエのリズムとグルーヴを基盤にしながらも、アメリカのR&Bやソウル、ファンクの要素を強く取り入れている点です[5][8]。特に冒頭を飾る「Try Jah Love」は、スティーヴィー・ワンダーが作曲・プロデュース・演奏で参加し、サウンド全体に洗練されたソウルフルな質感をもたらしています[1][6][7]。この曲は、ボブ・マーリーの死後、スティーヴィー・ワンダーがインスパイアされて書いたもので、サード・ワールドにとっても国際的なブレイクのきっかけとなりました[7]。

アルバム全体に通底するのは、明るくポジティブなメッセージ、複雑なコーラスワーク、そしてホーンやパーカッションを効果的に配した豊かなアレンジです[3][9]。また、「You're Playing Us Too Close」でもスティーヴィー・ワンダーがプロデュースと演奏を担当し、ファンキーなエレクトリック・ピアノが印象的です[1][6]。

他にも、バート・バカラック&ハル・デヴィッド作の「I Wake Up Cryin'」のカバーなど、ジャンルの枠を超えた選曲も本作の多様性を象徴しています[6][9]。

参加ミュージシャンと制作スタッフ

Third Worldの主要メンバー(当時)

  • ウィリアム "バニー・ラグス" クラーク(William "Bunny Rugs" Clarke):リード・ボーカル、リズムギター
  • マイケル "イブー" クーパー(Michael "Ibo" Cooper):キーボード、ボーカル、リズムギター
  • ステファン "キャット" クーア(Stephen "Cat" Coore):リードギター、ボーカル
  • リチャード "リッチー" デイリー(Richard "Richie" Daley):ベース、リズムギター
  • アーヴィン "キャロット" ジャレット(Irvin "Carrot" Jarrett):パーカッション、コーラス
  • ウィリー・スチュワート(Willie Stewart):ドラムス)

ゲスト・ミュージシャン

  • スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder):ピアノ、フェンダー・ローズ、ドリーム・マシン/「Try Jah Love」「You're Playing Us Too Close」
  • クリスタル・ブレイク(Crystal Blake):コーラス/「Jah, Jah Children Moving Up」

プロデューサー・エンジニア

  • 「Try Jah Love」「You're Playing Us Too Close」はスティーヴィー・ワンダーがプロデュース・アレンジ
  • それ以外の楽曲はサード・ワールド(Michael "Ibo" Cooper監修)がプロデュース
  • レコーディングはロサンゼルスのWonderland Recording Studioで行われ、Gary OlazabalやBobby Brooksがエンジニアを務めました[1][6]。

制作時のエピソード

サード・ワールドとスティーヴィー・ワンダーの出会いは1976年に遡り、ボブ・マーリーの死後、ワンダーがサード・ワールドと共にレゲエ・サンスプラッシュで共演したことが縁となり、本作での本格的なコラボレーションが実現しました[2][7]。「Try Jah Love」はワンダーがサード・ワールドのために書き下ろした楽曲で、レコーディングもワンダーのスタジオで行われています[1][6]。

バンドは当時、より広いリスナー層にレゲエの魅力を伝えるべく、アメリカの音楽市場を強く意識していました。サード・ワールドのメンバーは「レゲエはスピリチュアルな力であり、黒人のためのポジティブな力だ」と語っており、ジャンルを超えた音楽的融合を通じて国際的なメッセージを発信することを目指していました[10]。

発表時の反響と評価

『You've Got the Power』は、特に「Try Jah Love」が全米R&BチャートのTop 20入りを果たすなど、サード・ワールドにとってアメリカ市場での最大のヒットとなりました[1][7][10]。アルバム自体もR&Bアルバム・チャートで高順位を記録し、従来のレゲエ・ファンだけでなく、R&Bやソウルのリスナーにも広く受け入れられました[1][10]。

批評家からは、サード・ワールドの「レゲエをファンクやソウル、ディスコと融合させた革新的なサウンド」が高く評価される一方で、レゲエ純粋主義者からは「商業的すぎる」との批判もありました[2][3][10]。しかし、バンド自身は「ジャンルの垣根を越えることが自然な成り行きだった」と語っており、結果的にレゲエの国際化に大きく貢献した作品とされています[3][10]。

特筆すべき点

  • スティーヴィー・ワンダーとのコラボレーション:世界的なスーパースターとの共演は、サード・ワールドにとって大きな転機となり、レゲエの新たな可能性を示しました[1][7]。
  • ジャンル横断的なサウンド:レゲエにソウルやファンク、ディスコ、R&Bを融合させたサウンドは、その後の「レゲエ・フュージョン」やダンスホール、ヒップホップにも影響を与えました[2][10]。
  • ポジティブなメッセージ性:社会的・精神的なメッセージを、ダンサブルで親しみやすい音楽に乗せて伝える手法は、Third Worldの大きな魅力です[3][10]。
  • 国際的な成功:「Try Jah Love」のヒットをきっかけに、サード・ワールドは世界的なレゲエ・バンドとしての地位を確立しました[7][10]。

まとめ

『You've Got the Power』は、サード・ワールドの音楽的多様性と革新性、そして国際的なポップ・センスが結実したアルバムです。スティーヴィー・ワンダーとのコラボレーションをはじめ、レゲエを軸にしながらも幅広い音楽性を取り入れた本作は、1980年代初頭のレゲエ・シーンに新風を吹き込み、今なお高い評価を受けています[1][2][10]。

Citations:

  1. https://it.wikipedia.org/wiki/You've_Got_the_Power
  2. https://en.wikipedia.org/wiki/Third_World_(band)
  3. https://www.caribbean-beat.com/issue-52/third-world-first
  4. https://rootsandblues.ca/third-world/
  5. https://ticro.com/products/t00003515
  6. https://www.discogs.com/release/1050985-Third-World-Youve-Got-The-Power
  7. https://spotifythrowbacks.com/sweetest-reggae-on-spotify/the-third-world/5965/
  8. http://disque.jp/?pid=131761461
  9. https://www.allmusic.com/album/youve-got-the-power-mw0000195249
  10. https://www.encyclopedia.com/social-sciences-and-law/political-science-and-government/international-organizations/third-world
  11. http://capricious-records.com/?pid=160390362
  12. https://www.discogs.com/ja/release/1050985-Third-World-Youve-Got-The-Power
  13. https://www.jetsetrecords.net/third-world-youve-got-the-power/i/533005233632/
  14. https://www.discogs.com/ja/release/1949835-Third-World-Youve-Got-The-Power
  15. https://glocalrecords.com/?p=16644
  16. https://www.reggaecollector.com/en/detail/index.php?number=261972
  17. https://www.reggaecollector.com/en/detail/index.php?number=20341522
  18. https://www.waxpend.com/items/1420
  19. https://www.discogs.com/release/2506684-Third-World-Youve-Got-The-Power
  20. https://bamboo-music.net/?pid=170489930
  21. https://eastzono.seesaa.net/article/421641086.html
  22. https://www.youtube.com/watch?v=AJXrnV1vaT8
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