ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『ライヴ!』

『Live !』(ライヴ!)は、Bob Marley & the Wailers(ボブ・マーリー & ザ・ウェイラーズ)が「ライヴという形式で、レゲエとラスタのメッセージを世界規模に解き放つ」というコンセプトを体現した作品として位置づけられています。
『ライヴ!』が録音された1975年ロンドン公演の背景
本作は1975年7月18日、ロンドンのライシアム・シアターで行われた2夜連続公演の2日目を中心に収録されたライヴ盤で、同年12月5日にリリースされています。
当時マーリーは『Natty Dread』を経て本格的な国際進出期にあり、「ジャマイカ発のローカルなレゲエ」から「世界に向けたスピリチュアルで政治的なロック的ライヴショウ」へと飛躍する、その決定的な瞬間を記録した作品とされています。
観客は超満員で、会場の熱狂そのものを作品コンセプトの一部とするように、群衆のシンガロングや歓声があえて生々しく残されています。
レゲエの熱狂を伝える『ライヴ!』のサウンドと名演
収録曲は「Trenchtown Rock」「Burnin' and Lootin'」「Them Belly Full (But We Hungry)」「Lively Up Yourself」「No Woman, No Cry」「I Shot the Sheriff」「Get Up, Stand Up」といった、当時の代表曲で構成されています。
スタジオ音源よりもテンポ感はややタイトで、リズム隊のバウンスが強調されており、レゲエ本来の「ワン・ドロップ」を軸にしながら、ロックのダイナミクスとソウルのエモーションを兼ね備えたサウンドになっていることが特徴です。
特に「No Woman, No Cry」のライヴ・ヴァージョンは、オルガンのイントロが長く取られ、観客がコーラスを先取りして歌い出す様子まで収められており、「スタジオ版とは別物の決定版」と評されるほどの評価を得ています。
制作エピソードと録音
録音はアイランド・レコードのスタッフ、ダニー・ホロウェイが担当し、ローリング・ストーンズ・モバイル・スタジオを会場外に横付けして行われました。
2夜の公演(7月17日・18日)が録られ、そのうち大半は17日のテイクが使われ、唯一「Lively Up Yourself」は18日公演から採用されています。
ロンドン公演はロサンゼルスのロキシー・シアターでの5日間公演を終えた直後のツアーの一環で、バンドが完全に「ロード仕様」に鍛え上げられていた時期であり、そのテンションがそのまま音に刻まれています。
黄金期のメンバー:カールトン&ファミリーマンらの貢献
バンドの中核は、いわゆる70年代ウェイラーズの黄金ラインナップです。
- ボブ・マーリー(Bob Marley):リード・ヴォーカル、リズム・ギター
- カールトン・バレット(Carlton Barrett):ドラムス
- アストン・バレット(Aston “Family Man” Barrett):ベース
- タイロン・ダウニー(Tyrone Downie):キーボード、オルガン
- アル・アンダーソン(Al Anderson):リード・ギター
- アルヴィン・パターソン(Alvin “Seeco” Patterson):パーカッション
- リタ・マーリー(Rita Marley):バッキング・ボーカル/アイ・スリーズ(the "I Threes")
- ジュディ・モワット(Judy Mowatt):バッキング・ボーカル/アイ・スリーズ(the "I Threes")
コーラスはアイ・スリーズ(リタ・マーリー、ジュディ・モワット、マーシャ・グリフィス)が務めますが、このツアーではマーシャ・グリフィス(Marcia Griffiths)が妊娠のため不参加で、実質的に2人編成となっています。
このコンパクトな編成が、音数を絞りつつも立体感のあるライヴ・サウンドにつながっていると評されています。
トラックリスト
Side 1
- トレンチタウン・ロック(Trenchtown Rock) - 4:23
- バーニン・アンド・ルーティン(Burnin' and Lootin') - 5:11
- ゼム・ベリー・フル(Them Belly Full [But We Hungry]) - 4:36
- ライヴリー・アップ・ユアセルフ(Lively Up Yourself) - 4:33
Side 2
- No Woman, No Cry - ノー・ウーマン、ノー・クライ(7:07)
- I Shot the Sheriff - アイ・ショット・ザ・シェリフ(5:18)
- Get Up, Stand Up - ゲット・アップ、スタンド・アップ(6:28)
発表時の反響と評価
アルバムからシングルカットされた「No Woman, No Cry (Live '75)」は全英チャートで8位まで上昇し、マーリーの名を一気に広めるブレイクスルーとなりました。
アルバム自体もイギリスを中心に高いセールスと批評的評価を獲得し、後年には『Rolling Stone』誌の「史上最高のアルバム500枚」で126位にランクインするなど、ライヴ盤としてクラシックな地位を確立しています。
英紙『The Guardian』の「史上最高のライヴ・アルバム」リストでも上位(9位)に選ばれており、本作が単なる当時の記録物ではなく、ロック/ポップ史における重要作として認識されていることがわかります。

特筆すべきポイント
特筆すべきは、本作が「レゲエの現場感」を世界に可視化した作品であると同時に、「ボブ・マーリーというアイコン」が誕生する瞬間をパッケージしている点です。
観客の合唱、マイクのハウリング、ざらついたアンビエンスなど、本来なら“ノイズ”として処理されがちな要素を含めて、そのまま作品のエネルギーとして提示していることが、このアルバムのリアリティと時代性を際立たせています。
その後、2016年以降には2夜分の全公演を収めたデラックス版や拡張ヴァイナルもリリースされ、当時のセット全体を俯瞰できるようになったことで、『Live !』が持つ歴史的意義はむしろ増しているとも言えます。
このアルバムを聴く際、スタジオ盤とのアレンジの違いや、観客とのコール&レスポンスに耳を傾けながら通して味わうと、当時のロンドンにおける熱気と、レゲエがローカルからグローバルへ変貌していく瞬間をより生々しく感じていただけると思います。
Citations:
- https://www.bobmarley.com/release/live-1975/
- https://en.wikipedia.org/wiki/Live!_(Bob_Marley_and_the_Wailers_album)
- https://bestclassicbands.com/bob-marley-live-album-recording-date-7-18-15/
- https://superdeluxeedition.com/news/bob-marley-and-the-wailers-live-expanded-3lp-set-with-two-full-shows/
- https://www.allmusic.com/album/live!-mw0000190817
- https://www.facebook.com/BobMarley/posts/live-by-bob-marley-the-wailers-is-ranked-9-on-the-guardians-list-of-the-best-liv/1529739518516741/
- https://www.udiscovermusic.com/bob-marley/bob-marley-live/

