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レス・デューデック『セイ・ノー・モア』

レス・デューデック『セイ・ノー・モア』
レス・デューデック(Les Dudek)『セイ・ノー・モア』(Say No More)

1977年にリリースされたLes Dudek(レス・デューデック)の『Say No More』(セイ・ノー・モア)は、前作の延長線上にありつつも、よりファンキーで洗練されたサウンドと、ギター・インスト曲を要所に配置した構成が特徴のセカンド・ソロ・アルバムです。

Les Dudek『Say No More』のコンセプトと時代背景

本作は、オールマン・ブラザーズ・バンド(Allman Brothers Band)やボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)作品への参加で名を上げたギタリスト、レス・デューデックが、自身の音楽性を“南部寄りのブルース・ロック+西海岸的な洗練”として結晶させた作品だといえます。
9曲(+短いイントロ)すべてがオリジナルで構成され、そのうち「One To Beam Up」と「Zorro Rides Again」はギター・インストで、彼のプレイヤーとしてのアイデンティティを前面に出す役割を担っています。
ソングライティングは基本的にデューデック自身が手掛け、一部でキーボーディストのアラン・ファインゴールドらとの共作が見られます。

音楽性・サウンドの特徴

サウンド面では、南部ロックの土臭いグルーヴに、ファンク/フュージョン的なリズム感と、当時のLA産AORに通じる鍵盤アレンジが加わっているのが大きな特徴です。
ジェフ・ポーカロのタイトでグルーヴィなドラミングが全編(「Zorro Rides Again」を除く)で土台を作り、その上でデューデックのスライドやリード・ギターが縦横無尽に歌います。
「Jailabamboozle」「Lady You're Nasty」などでは、デヴィッド・ペイチやアラン・ファインゴールドらのピアノ/オルガン/ローズ・ピアノが厚みを与え、ブルース・ロックにソウルフルな色合いを加えています。

一方で、「Avatar」のようなやや長尺の曲では、ギターとキーボードがじっくりと展開していく、半ばジャム的な感触もあり、ライヴ感を意識した構成になっています。
アルバム終盤の「I Remember」は静かな弾き語りスタイルで、しゃがれ声のデューデックがしみじみと歌い上げるバラードで、アルバム全体の中で感情的な締めくくりの役割を果たしています。

ジェフ・ポーカロら豪華参加ミュージシャンと制作背景

本作のサウンドを語る上で欠かせないのが、TOTO人脈を含む一流セッション・プレイヤーの存在です。
参加ミュージシャンは主に以下のような布陣になっています。

  • レス・デューデック(Les Dudek):リードボーカル、リズムギター、リードギター、ドブロギター
  • ジェフ・ポーカロ(Jeff Porcaro):ドラム
  • トニー・ウィリアムズ(Tony Williams):ドラム
  • ジェラルド・ジョンソン(Gerald Johnson):ベース
  • チャック・レイニー(Chuck Rainey):ベース
  • ロバート・"ポップ"・ポップウェル(Robert "Pops" Popwell):ベース
  • デヴィッド・ペイチ(David Paich):ピアノ、フェンダー・ローズ・ピアノ
  • アラン・ファインゴールド(Alan Feingold):オルガン、ピアノ
  • テッド・ストラトン(Ted Straton):オルガン
  • ヨアヒム・ヤング(Joachiem Young):オルガン 
  • テッド・ストラトン(Ted Straton):オルガン
  • デヴィッド・サンシャス(David Sancious):オルガン
  • ケビン・カルホーン(Kevin Calhoun)、レイモンド(Reymondo)、パット・マーフィー(Pat Murphy):パーカッション
  • シャーリー・マシューズ(Sherlie Matthews)、レベッカ・ルイス(Rebecca Louis)、クライディ・キング(Clydie King):バックコーラス

特に「Zorro Rides Again」は“特別セッション”と呼べる布陣で、ジャズ界の名ドラマーのトニー・ウィリアムズ、The Crusadersのベーシスト、ロバート・ポップウェル、E Street Bandでも知られるデヴィッド・サンシャスらが参加し、デューデックのギターとともに強烈なインスト・トラックを作り上げています。
プロデュースはDoorsや数々のロック作品で知られるブルース・ボトニック(Bruce Botnick)が担当し、録音はCapitol Studios、ミックスはHollywood Sound Recorders、マスタリングはCapitol Masteringで行われるなど、メジャーらしい盤石の制作体制が敷かれていました。

収録曲構成と聴きどころ

公式クレジットでは、冒頭の「シャンペンを抜いた音に続き、一杯口にし、アァーという声」に続き、「Jailabamboozle」「Lady You're Nasty」「One To Beam Up」「Avatar」「Old Judge Jones」「Baby Sweet Baby」「What's It Gonna Be」「Zorro Rides Again」「I Remember」という流れで、ロック、ファンク、インスト、バラードがバランスよく配置されています。

  • 冒頭の「Jailabamboozle」は、リズミカルなギターとキーボードが絡むブルース・ロックで、アルバムのトーンを一気に提示する役割。
  • 「One To Beam Up」はファンキーなインストで、デューデックのギターと鍵盤陣の掛け合いが楽しめる曲です。
  • 「Zorro Rides Again」は、ジャズ/フュージョン寄りのドラミングとベースのうねりの中でギターが暴れる、アルバムでも屈指のハイライトとしてしばしば言及されています。

全体としては“ギタリストのアルバム”であると同時に、セッション色の強いアンサンブル作品という側面もあり、リズム、鍵盤、コーラスの絡みがサウンドを豊かにしています。

Side 1

  1. ジェイラバンブーズル(Jailabamboozle) - 4:52
  2. レディー・ユーアー・ナスティ(Lady You're Nasty) - 5:33
  3. ワン・トゥ・ビーム・アップ(One To Beam Up) - 3:25
  4. アヴァター(Avatar) - 7:00
  5. オールド・ジャッジ・ジョーンズ(Old Judge Jones) - 4:39

Side 2

  1. ベイビー・スウィート・ベイビー(Baby Sweet Baby) - 2:10
  2. ホワット・イッツ・ゴナ・ビー(What's It Gonna Be) - 5:07
  3. 帰ってきた怪傑ゾロ(Zorro Rides Again) - 5:47
  4. アイ・リメンバー(I Remember) - 3:05

発表時の反響と特筆すべき点

『Say No More』はチャート的な大ヒットには至らなかったものの、ギター・ファンやジェフ・ポーカロ(Jeff Porcaro)周辺のセッション・ワークを追うリスナーの間では、今も“隠れ名盤”的に扱われている作品です。
とりわけ、ポーカロがほぼ全編で叩いていることから、彼の初期スタジオ・ワークをまとめて味わえる1枚として、ドラマー視点の再評価が進んでいます。
また、デューデック自身がオールマン・ブラザーズ・バンド(Allman Brothers Band)やボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)周辺で見せた南部〜ウェストコーストの感覚を、セッション界の精鋭たちとともに凝縮したアルバムである点も大きな魅力です。

特筆すべきは、ギター・インスト曲が単なる技巧披露にとどまらず、アルバム全体の流れの“節目”として機能している構成力と、渋いしゃがれ声のヴォーカル曲とのコントラストの妙です。
ロック、ファンク、フュージョン、AORの境界線に位置しながら、そのどれにも完全には回収されない“いぶし銀の一枚”として、今聴いても新鮮な味わいがあるアルバムだといえると思います。

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Citations:

  • https://www.lesdudek.com/Say-No-More.html
  • https://warmbreeze.jp/music/les-dudek-say-no-more
  • https://sessiondays.com/2020/03/10/1977-les-dudek-say-no/
  • https://warmbreeze.jp/music/les-dudek-say-no-more
  • https://mera-record.stores.jp/items/67c94e2072c3a49072a2c3be
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