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ピンク・フロイド『ファイナル・カット』

ピンク・フロイド『ファイナル・カット』
ピンク・フロイド(Pink Floyd)『ファイナル・カット』(The Final Cut)

Pink Floyd(ピンク・フロイド)のアルバム『The Final Cut』(ファイナル・カット)は、1983年に発表されたバンドの12枚目のスタジオアルバムであり、ロジャー・ウォーターズがバンドに在籍して制作した最後の作品です。
このアルバムは、戦争、政治、個人的な喪失感をテーマにしたコンセプトアルバムであり、非常に個人的かつ政治的な内容が特徴です。

『ファイナル・カット』のコンセプトとテーマ

『ファイナル・カット』は、「戦後の夢」に対するレクイエムとして位置づけられています。
ロジャー・ウォーターズは、第二次世界大戦で戦死した父親への思いを核に、戦争の無意味さや政治家たちによる平和の裏切りを描きました。
特に1982年のフォークランド紛争が彼に強い影響を与え、このアルバムの主要なインスピレーションとなりました[1][2][16]。

アルバムはまた、マーガレット・サッチャー首相や冷戦時代の世界情勢への批判も含まれており、ウォーターズは「The Fletcher Memorial Home」で政治家たちを皮肉たっぷりに描写しています[2][14]。
最終曲「Two Suns in the Sunset」では核戦争による終末的なビジョンが描かれています[2][3]。

音楽性とサウンド

音楽的には、『ファイナル・カット』はピンク・フロイドの他の作品と比較してシンプルで控えめなアレンジが特徴です。
シンセサイザーやエレクトリックギターよりもアコースティックギターやピアノ、そしてナショナル・フィルハーモニック管弦楽団によるオーケストラアレンジが中心となっています[3][6]。
マイケル・ケイメンがオーケストラ編曲とピアノ演奏を担当し、その映画的な雰囲気がアルバム全体を包み込んでいます[36][37]。

ドラムスはニック・メイスンが一部参加するものの、最終曲「Two Suns in the Sunset」ではアンディ・ニューマークが代わりに演奏しています[36]。
また、デヴィッド・ギルモアのギターソロは「Your Possible Pasts」や「The Fletcher Memorial Home」などで際立っており、その感情的な演奏がアルバムに深みを加えています[31]。

参加ミュージシャン

ピンク・フロイド

  • ロジャー・ウォーターズ(Roger Waters):リードボーカル(全曲)、ベースギター(7曲目を除く全曲)、アコースティックギター(2~4、6、7、9~12)、シンセサイザー(3、4、10、11)、12弦ギター(11)、テープエフェクト、プロデュース、ジャケットデザイン
  • デヴィッド・ギルモア(David Gilmour):リードギター、リズムギター(1、2、4、5、8、10~12)、リードボーカル(11)、追加バックボーカル(10)
  • ニック・メイソン(Nick Mason):ドラム(1、2、4、5、8、10~11)、パーカッション

ゲスト・ミュージシャン

  • マイケル・ケイメン(Michael Kamen):ピアノ(5、6、8–10、12)、エレクトリックピアノ(2、5)、ハーモニウム (1、10)、プロデュース
  • アンディ・ボーン(Andy Bown):ハモンドオルガン (2、6、11、12)、ピアノ(5)、エレクトリックピアノ(4)
  • レイ・クーパー(Ray Cooper):パーカッション(2、6)
  • アンディ・ニューマーク(Andy Newmark):ドラムス(12)
  • ラファエル・レイヴンズクロフト(Raphael Ravenscroft):テナーサックス (5、12)
  • ドリーン・チャンター(Doreen Chanter):バックボーカル(11)
  • アイリーン・シャンター(Irene Chanter):バックボーカル(11)
  • ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団、マイケル・ケイメン指揮・編曲(1、5~10)

トラック・リスト

Side 1

  1. ザ・ポスト・ウォー・ドリーム(The Post War Dream) – 3:00
  2. ユア・ポッシブル・パスツ(Your Possible Pasts) – 4:26
  3. ワン・オブ・ザ・フュー(One of the Few) – 1:11
  4. ザ・ヒーローズ・リターン(The Hero's Return) – 2:43
  5. ザ・ガンナーズ・ドリーム(The Gunner's Dream) – 5:18
  6. パラノイド・アイズ(Paranoid Eyes) – 3:41

Side 2

  1. ゲット・ユア・フィルシィ・ハンズ・オフ・マイ・デザート(Get Your Filthy Hands Off My Desert) – 1:17
  2. ザ・フレッチャー・メモリアル・ホーム(The Fletcher Memorial Home) – 4:12
  3. サザンプトン・ドッグ(Southampton Dock) – 2:14
  4. ファイナル・カット(The Final Cut) – 4:43
  5. ノット・ナウ・ジョン(Not Now John) – 5:02
  6. トゥー・サンズ・イン・ザ・サンセット(Two Suns in the Sunset) – 5:14

制作背景とエピソード

制作時期にはバンド内で深刻な対立がありました。キーボーディストのリチャード・ライトは既に解雇されており、本作は彼が不参加の唯一のピンク・フロイド作品です[33][35]。
また、ウォーターズとギルモアとの間では創作上の意見対立が激化し、ギルモアは本作への関与を最低限に抑えました[30][33]。

さらに、共同プロデューサーであるマイケル・ケイメンはウォーターズの厳格な要求に精神的に追い詰められたという逸話もあります[4][28]。
このような緊張感はアルバム全体に反映されており、一部では本作を「ロジャー・ウォーターズのソロアルバム」と見る声もあります[21][35]。

発表時の反響

『ファイナル・カット』は商業的には成功し、イギリスではチャート1位を獲得しましたが、その評価は賛否両論でした。
一部批評家からは「ロックアートの不朽の名作」と絶賛される一方で[43]、「重く沈痛すぎる」「音楽的実験性に欠ける」といった批判も受けました[42][43]。

ファンや評論家からはその政治的メッセージ性やウォーターズ主導の制作スタイルについて意見が分かれています。
しかし、そのテーマ性や感情的な深さから、本作をピンク・フロイド作品中でも特異かつ重要な位置づけとする声も少なくありません[5][6][13]。

特筆すべき点

  • 完全なるコンセプトアルバム: 『The Final Cut』は一貫したテーマと物語性を持つ作品であり、その内容は非常に個人的かつ政治的です。
  • ウォーターズ単独作詞作曲: すべての楽曲がウォーターズによって書かれており、彼がリードボーカルを務めています(「Not Now John」を除く)[33][35]。
  • 音響技術: ホロフォニック録音技術を採用し、立体的なサウンドデザインが特徴です[30]。

『The Final Cut』はピンク・フロイドの歴史だけでなく、1980年代初頭という時代背景を反映した作品としても重要です。
その重厚なテーマと音楽性は、多くの議論を呼び起こしつつも、一部では過小評価されているとも言えるでしょう。

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Citations:
[1] https://www.echoes.co.il/pink-floyd-knowledge-base/the-final-cut
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/The_Final_Cut_(album)
[3] https://pienemmatpurot.com/2023/03/20/review-pink-floyd-the-final-cut-1983/
[4] https://faroutmagazine.co.uk/the-musician-pink-floyd-traumatised-while-making-the-final-cut/
[5] https://thequietus.com/opinion-and-essays/anniversary/pink-floyd-the-final-cut/
[6] https://www.pinkfloydz.com/library-books/essay-final-cut-album/
[7] https://www.reddit.com/r/pinkfloyd/comments/17rebon/what_is_your_interpretation_of_the_final_cut/
[8] https://www.popmatters.com/pink-floyd-final-cut-atr40
[9] https://www.reddit.com/r/pinkfloyd/comments/33r2dc/overbearing_theme_of_each_album/
[10] https://www.songfacts.com/facts/pink-floyd/the-final-cut
[11] https://www.pinkfloydz.com/library-books/essay-final-cut-album/
[12] https://joesiegler.blog/2024/12/pink-floyd-the-final-cut/
[13] https://thequietus.com/opinion-and-essays/anniversary/pink-floyd-the-final-cut/
[14] http://www.darrenreidhistory.co.uk/pink-floyd-and-the-cold-war/
[15] https://pienemmatpurot.com/2023/03/20/review-pink-floyd-the-final-cut-1983/
[16] https://www.umdjanus.com/single-post/2019/09/29/not-now-john-pink-floyd-s-the-final-cut-and-the-history-that-inspired-it
[17] http://floydlyrics.blogspot.com/2010/02/final-cut-album.html
[18] https://support.apple.com/guide/final-cut-pro-logic-effects/intro-to-levels-effects-lgex25ccd61b/mac
[19] https://danpeeke.wordpress.com/wp-content/uploads/2019/05/to-what-extent-did-roger-waters-1967-1969-songwriting-style-shape-1983s-the-final-cut.pdf
[20] https://www.tella.com/definition/audio-ducking
[21] https://nowspinning.co.uk/pink-floyd-the-final-cut-1983-classic-album-review/
[22] https://www.youtube.com/watch?v=Jl9OVTK_mR8
[23] https://www.youtube.com/watch?v=rBXzgjBYAUc
[24] https://digitalfilms.wordpress.com/2023/02/11/nle-tips-audio-track-mixing-in-final-cut-pro/
[25] https://gearspace.com/board/audio-student-engineering-production-question-zone/1221857-pink-floyd-final-cut-how.html
[26] https://www.reddit.com/r/pinkfloyd/comments/x4437n/the_final_cut_could_have_been_as_legendary_as_the/
[27] https://www.reddit.com/r/pinkfloyd/comments/xhholy/revisited_the_final_cut/
[28] https://www.loudersound.com/features/the-final-cut-by-pink-floyd-20-things-you-didnt-know
[29] https://www.facebook.com/story.php?story_fbid=1077883354349323&id=100063830045533
[30] https://www.loudersound.com/features/how-pink-floyd-made-the-final-cut-and-learned-to-hate-each-other
[31] https://www.reddit.com/r/pinkfloyd/comments/110stdt/gilmours_contributions_to_the_final_cut/
[32] https://ameblo.jp/memeren3/entry-12728820142.html
[33] https://www.iheart.com/content/2021-03-19-10-things-you-might-not-know-about-pink-floyds-the-final-cut/
[34] https://www.hmv.co.jp/artist_Pink-Floyd_000000000004473/item_Final-Cut_6844761
[35] https://simple.wikipedia.org/wiki/The_Final_Cut_(album)
[36] https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/e/e4/FloydFC-Cover01.jpg?sa=X&ved=2ahUKEwjJqYfUup2LAxWErJUCHawJGOgQ_B16BAgCEAI
[37] https://www.reddit.com/r/pinkfloyd/comments/xgt6et/who_played_all_the_piano_on_the_final_cut_album/
[38] https://www.reddit.com/r/pinkfloyd/comments/113qh2c/why_does_the_final_cut_get_so_much_hate/
[39] https://www.reddit.com/r/pinkfloyd/comments/1548f31/thoughts_on_the_final_cut/
[40] https://www.hmv.co.jp/artist_Pink-Floyd_000000000004473/item_Final-Cut-%E3%80%90%E7%B4%99%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E4%BB%95%E6%A7%98-%E5%AE%8C%E5%85%A8%E7%94%9F%E7%94%A3%E9%99%90%E5%AE%9A%E7%9B%A4%E3%80%91_8176742
[41] https://faroutmagazine.co.uk/album-signalled-end-for-classic-lineup-pink-floyd/
[42] https://www.albumoftheyear.org/user/remisreviews/album/5259-the-final-cut/
[43] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%88_(%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%A0)

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