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カウント・ベイシー・オーケストラ『ベイシー・イン・ロンドン』

カウント・ベイシー・オーケストラ『ベイシー・イン・ロンドン』
カウント・ベイシー・オーケストラ(Count Basie Orchestra)『Basie in London』(ベイシー・イン・ロンドン)

Count Basie(カウント・ベイシー)とその楽団のライブアルバム『Basie in London』(ベイシー・イン・ロンドン)は、1956年にVerveレーベルからリリースされた作品で、ベイシー楽団の黄金期を捉えた記念碑的なライブ録音です。
このアルバムは、ビッグバンドジャズの最高峰として今も語り継がれる名盤となっています [1]。

『ベイシー・イン・ロンドン』のコンセプトと音楽性

『Basie in London』は、1950年代中期のカウント・ベイシー楽団のエネルギーと洗練されたサウンドを生々しく記録したライブアルバムです。
ベイシーが1950年から51年にかけて楽団を再編成して以降、彼のオーケストラは大きな変貌を遂げていました。
1936年の初期の楽団がカンザスシティのジャムセッションスタイルを基調としていたのに対し、1950年代の新生ベイシー楽団は、マスエフェクト、オーケストラの精密さ、冒険的なヴォイシング、そして新しいレパートリーに依拠したサウンドを確立していました[2]。

この時期のベイシー楽団のサウンドは、1930年代のジミー・ランスフォード・オーケストラをわずかに彷彿とさせるものの、ジャズ史において他に類を見ない独自のものでした。
フランク・フォスター(「Shiny Stockings」の作曲者)、ニール・ヘフティ、サッド・ジョーンズといった才能豊かな作編曲家たちの手により、ベイシー楽団は新たな音楽的境地を切り開いていました[2]。

サウンドの特徴

このアルバムに収録された演奏の最大の特徴は、その比類のないバイタリティとアンサンブルの推進力です。
アレンジメントは生き生きとしたジャズステートメントであり、ソリストたちに最高のパフォーマンスを要求するものでした。
ジョー・ニューマン、フランク・ウェス、フランク・フォスター、ベニー・パウエルといったソリストたちの演奏は、インスピレーションに満ち、意味深いものとなっています[3]。

ベイシー楽団のサウンドの根幹を成していたのは、言うまでもなくリズムセクションです。
伝説的なフレディ・グリーン、エディ・ジョーンズ、ソニー・ペインによるリズムセクションは、このバンドの究極の基盤であり、もちろんその中心人物はカウント・ベイシー自身でした。
彼らのリズムセクションは、単にスウィングの真髄であり、ベイシー楽団の第一言語は常にブルースでした[4]。

また、ジョー・ウィリアムズのヴォーカルもこのアルバムの重要な要素となっています。
彼の歌唱は生気に満ち、効果的で、1954年のクリスマスにベイシー楽団に加入して以来、バンドの人気を大きく押し上げていました[5]。

制作時のエピソード

このアルバムには興味深い背景があります。タイトルは『Basie in London』となっていますが、実際には1956年9月7日にスウェーデンのイェーテボリ(ゴーセンバーグ)のコンサートホールで録音されたものです。
この録音は、ベイシー楽団が1956年8月31日から10月12日まで行った約1ヶ月半のヨーロッパツアーの一環として行われました[6]。

アルバムタイトルが「ロンドン」となったのは、アメリカ音楽家連盟(AFM)とイギリス音楽家組合(MU)の間で続いていた紛争のため、この1956年のツアーにはイギリス公演が含まれていなかったものの、1957年春に予定されていた大規模なイギリスツアーを見越して、イギリス市場での販売促進を図るためでした。
このアルバムは、ベイシー楽団がイギリスで追いつくための手段となり、その後の「Atomic」レコーディングに向けた地ならしの役割を果たしました[1]。

また、アルバムのカバー写真は、1957年4月13日にロンドンのサウス・ランベスにあるランベス・ウォーク・パブリック・ハウスの外で撮影されました。
この写真は、バンドがロイヤル・フェスティバル・ホールでのマチネコンサートの後、リッツ・ホテルでのイブニング公演を待っている間に撮影されたものです[1]。

参加ミュージシャン

このアルバムには、1950年代のベイシー楽団を代表する伝説的なミュージシャンたちが参加しています。
トランペットにはジョー・ニューマン、リユノルド・ジョーンズ、ウェンデル・カリー、サッド・ジョーンズ、トロンボーンにはヘンリー・コーカー、ベニー・パウエル、ビル・ヒューズ、そしてリードセクションにはマーシャル・ロイヤル、ビル・グラハム、フランク・ウェス、フランク・フォスター、チャーリー・ファウルクスといった名手が名を連ねています[7]。

リズムセクションは、カウント・ベイシー(ピアノ)、フレディ・グリーン(ギター)、エディ・ジョーンズ(ベース)、ソニー・ペイン(ドラムス)という最強の布陣で、一部の楽曲ではヴォーカリストのジョー・ウィリアムズも参加しています。
アルトサックスのマーシャル・ロイヤルの卓越したリードのもと、バリトンサックスのチャーリー・ファウルクスの大きな貢献により、サックスセクションは見事なアンサンブルを展開しています[8]。

カウント・ベイシー・オーケストラ

  • カウント・ベイシー(Count Basie):ピアノ
  • フランク・フォスター(Frank Foster):テナーサックス
  • チャーリー・フォークス(Charlie Fowlkes):バリトンサックス
  • ビル・グラハム(Bill Graham):アルトサックス
  • マーシャル・ロイヤル(Marshal Royal):アルトサックス・クラリネット
  • フランク・ウェス(Frank Wess):フルート・テナーサックス
  • ヘンリー・コーカー(Henry Coker):トロンボーン
  • マシュー・ジー(Matthew Gee):トロンボーン
  • ベニー・パウエル(Benny Powell):トロンボーン
  • ウェンデル・カリー(Wendell Culley):トランペット
  • ルナルド・ジョーンズ(Reunald Jones):トランペット
  • サド・ジョーンズ(Thad Jones):トランペット
  • ジョー・ニューマン(Joe Newman):トランペット
  • フレディ・グリーン(Freddie Green):ギター
  • エディ・ジョーンズ(Eddie Jones):ベース
  • ソニー・ペイン(Sonny Payne):ドラム
  • ジョー・ウィリアムズ(Joe Williams):ボーカル

収録曲と演奏の特徴

オリジナルのLPには「Jumpin' at the Woodside」「Shiny Stockings」「Nails」「One O'Clock Jump」といったベイシーの代表曲に加え、ジョー・ウィリアムズが歌う「Alright, Okay, You Win」「Roll 'Em Pete」などが収録されました[3]。

Side 1

  1. ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド(Jumpin' at the Woodside) - 3:38
  2. シャイニー・ストッキングス(Shiny Stockings) - 5:19
  3. ハウ・ハイ・ザ・ムーン(How High the Moon) - 3:37
  4. ネイルズ(Nails) - 6:24
  5. フルート・ジュース(Flute Juice) - 3:09
  6. ブリー・ブロップ・ブルース(Blee Blop Blues) - 2:26

Side 2

  1. ウェル・オールライト・オーライ、オーケー、ユー・ウィン(Well Alright, Okay, You Win) - 2:50
  2. ロール・エム・ピート(Roll 'Em Pete) - 2:32
  3. ザ・カムバック(The Comeback) - 4:08
  4. ブルース・バックステージ(Blues Backstage) - 4:27
  5. コーナー・ポケット(Corner Pocket) - 4:45
  6. ワン・オクロック・ジャンプ(One O'Clock Jump) - 1:39

発表時の反響と評価

このアルバムは、1950年代のベイシー楽団の白熱したライブパフォーマンスを記録した傑作として高く評価されました。
観客は熱狂的で、バンドもその熱意に全力で応えており、「ベイシー楽団の最高の姿がここにある」と評されています[4]。

特筆すべき点

このアルバムは、1950年代中期のカウント・ベイシー楽団の芸術的頂点を記録した作品として、ビッグバンドジャズの歴史において特別な位置を占めています。
全てのミュージシャンが最高の状態にあり、優れたアレンジメントを精密かつ活気に満ちて演奏し、力強く色彩豊かなジャズソロを披露しています[8]。

また、このアルバムは翌年の「The Atomic Mr. Basie」という画期的なスタジオアルバムへの橋渡しとなった重要な作品でもあります。
1950年代のベイシー楽団の真髄――卓越したアレンジメント、名人芸のミュージシャンたち、そして何よりもスウィングとブルースの精神――が、このライブ録音には余すところなく刻まれています[1]。

Citations:
[1] https://en.wikipedia.org/wiki/Basie_in_London
[2] https://bibliolore.org/2014/08/21/basies-unprcedented-sound/
[3] https://www.freshsoundrecords.com/count-basie-albums/5351-basie-in-london.html
[4] https://www.jazzmessengers.com/en/6934/count-basie/basie-in-london
[5] http://yt.kuciv.kyoto-u.ac.jp/joe/disco50s.html
[6] https://www.prestomusic.com/jazz/products/8475720--count-basie-and-his-orchestra-basie-in-london
[7] https://countbasie.client.jp/discography/basie_in_london.html
[8] https://swingandbeyond.com/2017/02/04/blues-in-hoss-flat-1958-count-basie/

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