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ジョン・コルトレーン『スタンダード・コルトレーン』

ジョン・コルトレーン『スタンダード・コルトレーン』
ジョン・コルトレーン(John Coltrane)『スタンダード・コルトレーン』(Standard Coltrane)

『Standard Coltrane』(スタンダード・コルトレーン)は、(ジョン・コルトレーン)が1958年7月11日にニュージャージー州ハッケンサックの伝説的なヴァン・ゲルダー・スタジオで録音し、1962年にプレスティッジ・レーベルからリリースされたアルバムです。

『スタンダード・コルトレーン』のコンセプト

この作品は、タイトルが示す通り、いわゆる「スタンダード」ナンバーを中心に構成されており、コルトレーンが自身の音楽的アイデンティティを模索し、サイドマンからリーダーへと成長する過渡期を捉えた重要な記録です。

この時期のコルトレーンは、マイルス・デイヴィスやセロニアス・モンクのバンドでの活動を経て、独自の即興スタイル「sheets of sound(音のカーテン)」を発展させていました。アルバムは、親しみやすいスタンダード曲を通じて、コルトレーンがどのように既存の素材を自分の表現に昇華させていったかを示しています。

音楽性・サウンドの特徴

  • ハード・バップを基調
    ジャズの伝統的なハーモニーやリズムを保ちながらも、コルトレーン独自のフレージングや即興性が随所に表れています。
  • sheets of sound
    急速なスケールやアルペジオを駆使した、密度の高いソロが特徴的です。特に「Invitation」や「Don't Take Your Love From Me」などでそのスタイルが顕著です。
  • バラード中心の選曲
    アルバム全体は落ち着いた雰囲気で、バラードやミディアム・テンポの曲が多く、コルトレーンのリリカルな側面が強調されています。
  • アンサンブルの調和
    ウィルバー・ハーデンの温かみのあるトランペットや、レッド・ガーランドの流麗なピアノが、コルトレーンのサックスと絶妙に絡み合い、全体として洗練されたアンサンブルを生み出しています。

収録曲

Side 1

  1. Don't Take Your Love From Me - 9:17(Henry Nemo)
  2. I'll Get By - 8:12(Fred Ahlert, Roy Turk)

Side 2

  1. Spring Is Here - 6:55(Lorenz Hart, Richard Rodgers)
  2. Invitation - 10:22(Bronislau Kaper, Paul F. Webster)

制作時のエピソード

  • 録音セッション
    1958年7月11日、ヴァン・ゲルダー・スタジオで1日で録音されました。このセッションでは8曲が録音され、そのうち4曲が本作に収録されています。他の曲は『Stardust』『Bahia』など別のアルバムに分散して収録されました。
  • Prestigeレーベルの事情
    コルトレーンは既にImpulse!レーベルへ移籍していましたが、PrestigeやAtlanticなど過去のレーベルからも未発表音源が次々とリリースされていました。そのため『Standard Coltrane』はリリース時点で、コルトレーンの音楽的進化からやや遅れた印象を与えました。

参加ミュージシャン

  • ジョン・コルトレーン(John Coltrane):テナーサックス
  • ウィルバー・ハーデン(Wilbur Harden):トランペット/フリューゲルホルン
  • レッド・ガーランド(Red Garland):ピアノ
  • ポール・チェンバース(Paul Chambers):ベース
  • ジミー・コブ(Jimmy Cobb):ドラムス

いずれも当時のジャズ・シーンを代表する名手であり、特にポール・チェンバースとジミー・コブはマイルス・デイヴィス・バンドでも活躍したリズム隊です。

発表時の反響

  • 評論家の評価
    リリース当時は、既にコルトレーンが『Giant Steps』『My Favorite Things』などで革新的な音楽を展開していたこともあり、本作は「歴史的価値は高いが、必ずしもコルトレーンの代表作ではない」とする評価が多く見られました。AllMusicは「歴史的価値はあるが、必須作ではない」とし、The Penguin Guide to Jazzは「低強度でバラード中心、リラックスした雰囲気」と評しています。
  • ファンの受け止め
    コルトレーンの多作ぶりと重なり、Prestigeからのリリースは「過去の音源の再パッケージ」と受け取られることもありましたが、コルトレーンの初期スタイルやスタンダード解釈を知る上で貴重な記録とされています。

特筆すべきこと

  • コルトレーンの過渡期を捉えた記録
    本作は、コルトレーンが「sheets of sound」を磨きつつ、スタンダード曲を通じて自身の音楽性を模索していた時期の貴重な記録です。
  • スタンダード解釈の妙
    馴染み深いスタンダード曲に新たな息吹を吹き込むコルトレーンのアプローチは、後のモーダル・ジャズやスピリチュアル・ジャズへの布石とも言えます。
  • 録音・音質の良さ
    ヴァン・ゲルダー・スタジオでの録音は、当時としては非常に高音質で、アナログ・マスターからのリマスター盤も高い評価を受けています。

まとめ

『Standard Coltrane』は、ジョン・コルトレーンの音楽的成長過程を知る上で欠かせないアルバムです。派手な革新性は控えめながら、スタンダード曲の解釈やアンサンブルの妙、そしてコルトレーン独自のサウンドが随所に感じられます。コルトレーンのディスコグラフィーの中では地味な存在かもしれませんが、彼の音楽的ルーツや進化の一端を垣間見ることができる、隠れた名盤です。

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