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ロビー・デュプリー『ふたりだけの夜』

ロビー・デュプリー『ふたりだけの夜』
ロビー・デュプリー(Robbie Dupree)『ふたりだけの夜』(Robbie Dupree)

1980年にリリースされたRobbie Dupree(ロビー・デュプリー)のセルフタイトル作『Robbie Dupree』(邦題:ふたりだけの夜)は、いわゆるAOR~“ヨット・ロック”と呼ばれるサウンドのど真ん中に位置しつつも、ストリート出身のシンガーが一気にメジャーの表舞台へ躍り出た瞬間を刻んだアルバムです。
端正なウェストコースト・サウンドでありながら、どこかブルックリンの路地裏の湿り気を残した、独特の温度感を持った作品だといえます[2]。

『ふたりだけの夜』のコンセプトと位置づけ

  • 『Robbie Dupree』は、デュプリーが長年の下積みを経てようやく手にしたメジャー・デビュー作であり、「シンガー・ソングライターとしての自己紹介」のような役割を果たしています[2]。
  • ストリートでR&Bを歌い、クラブ・シーンで鍛えた歌心を、ロサンゼルスの洗練されたAOR文法の中に落とし込む、というコンセプトが作品全体を貫いています[4]。

音楽性とサウンドの特徴

  • サウンド面では、柔らかなエレピとクリーンなギター、滑らかなベースとドラムが織りなすミディアム〜スロー中心のAORで、後年「ヨット・ロック」の代表例のひとつとして語られるようになります[5]。​
  • 「Steal Away」や「Hot Rod Hearts」に顕著なように、マイケル・マクドナルド周辺を想起させる都会的なコード進行とコーラス・ワークがありつつ、デュプリーの声にはソウルやドゥーワップ由来の少しざらついた質感が残っているのが大きな特徴です[3]。​

制作の背景とエピソード

  • デュプリーは1970年代前半、ニューヨークでナイル・ロジャースらとバンドを組み、ウッドストックでバンド活動を続けたのち、1978年にロサンゼルスへ移り、旧友リック・チャダコフ(b)とピーター・ブネッタ(ds)と組んでソロ・プロジェクトを始動します[2]。​
  • アルバム制作は、まず4曲入りデモの段階と、エレクトラとの契約成立後の本格レコーディングという二段階で進められました。
    全体でも録音約20日、ミックス10日ほどという比較的タイトなスケジュールで、しかも制作費約7万ドルという“無駄のない”小規模プロダクションだったとデュプリー本人が振り返っています。
  • レコーディングは「ライブ・バンド感」を重視したストレートなやり方で、プロデューサーでもあるブネッタとチャダコフ、エンジニアのゲイリー・ブラントが、ヴィンテージのアナログ機材を駆使して豊かな音像を作り上げました。
  • ただし、録音時間の半分ほどはオーバーダビングに費やされ、大きめのバック・コーラスやシンセ/キーボードのレイヤーが入念に重ねられています。
    シンプルなバンド一発録りというより、「ライヴ感+丁寧なオーバーダブ」の折衷というのが実態でした。

参加ミュージシャンと制作体制

  • プロデュースを務めたのは、前述のリック・チャダコフとピーター・ブネッタで、彼らは同時にベーシストとドラマーとして演奏面でも中核を担っています[7]。​
  • キーボードやギターには、同時代のウェストコースト人脈と結びついたミュージシャンが参加しており、バック・コーラスにも複数のシンガーが起用され、大きなハーモニーがサウンドの要になっています[7]。​
  • デュプリーはインタビューで、「制作現場はレーベルからほぼ見えないところで進んでおり、エレクトラは『Steal Away』がヒットした後に慌ててアルバムを急がせた」と語っています。
  • その意味で、このアルバムはメジャーの厳しい管理下ではなく、「仲間内のバンド的な雰囲気」で作られた“マーヴェリック(型破り)なレコード”だったと本人は表現しています。

参加ミュージシャン

  • ロビー・デュプリー(Robbie Dupree):ヴォーカル、ハーモニカ、パーカッション
  • ビル・エリオット(Bill Elliot):キーボード
  • ロバート・パーマー(Robert Palmer):ギター
  • リック・チャダコフ(Rick Chudacoff):ベース、キーボード
  • ピーター・ブネッタ(Peter Bunetta):ドラム、パーカッション
  • ミゲル・リベラ(Miguel Rivera):コンガ、パーカッション

ゲスト・ミュージシャン

  • ビル・ラバウンティ(Bill LaBounty):キーボード、バックグラウンド・ヴォーカル
  • ブライアン・レイ(Brian Ray):ギター
  • デニス・ヘリング(Dennis Herring):ギター
  • ボブ・ボーディ(Bob Bordy):ギター
  • ジェリー・ピーターソン(Jerry Peterson):サックス
  • マイケル・ボディカー(Michael Boddicker):シンセサイザー
  • アラン・エステス(Alan Estes):マリンバ、パーカッション
  • カル・デイヴィッド(Kal David):エレクトリック・シタール、バックグラウンド・ヴォーカル
  • レスリー・スミス(Leslie Smith):バックグラウンド・ヴォーカル
  • アルノ・ルーカス(Arno Lucas):バックグラウンド・ヴォーカル
  • マシュー・ウェイナー(Mathew Weiner):バックグラウンド・ヴォーカル
  • ジョー・トゥラノ(Joe Turano):バックグラウンド・ヴォーカル

トラック・リスト

Side 1

  1. ふたりだけの夜(STEAL AWAY)
  2. アイム・ノー・ストレンジャー(I'M NO STRANGER)
  3. シン・ライン(THIN LINE)
  4. イッツ・ア・フィーリング(IT'S A FEELING)
  5. ホット・ロッド・ハート(HOT ROD HEARTS)

Side 2

  1. ノーバディ・エルス(NOBODY ELSE)
  2. ウィ・ボウス・トライド(WE BOTH TRIED)
  3. 恋はミステリー(LOVE IS A MYSTERY)
  4. 孤独なランナー(LONELY RUNNER)

発表時の反響と特筆すべき点

  • 先行シングル「Steal Away」は全米TOP10入りする大ヒットとなり、続く「Hot Rod Hearts」も全米チャートで上位に食い込む成功を収めました[8]。​
  • このアルバムのヒットにより、デュプリーはグラミー賞「最優秀新人賞」にノミネートされ、ストリート出身の無名シンガーから、一気に全米レベルのAORアーティストとして認知されることになります[2]。​
  • デュプリー自身は、このアルバムを「自分のキャリアを永続させてくれた作品」と語り、当時の歌詞やサウンドに後悔はないとしています。
    ファンが自分の人生の記憶と重ねて聴いてくれることこそが、楽曲の力を決定づけると考えているからだと述べています。
  • また、録音当時はあくまで時代に即したポップ・アルバムとして作られたにもかかわらず、21世紀に入って“ヨット・ロック再評価”の文脈で再発・再評価され、今ではプレイリストの定番として若い世代にも発見され続けている点も、この作品の特筆すべきところです[10]。​

このように『ふたりだけの夜』は、AOR黄金期の洗練と、シンガーの生身のバックグラウンドが絶妙に溶け合ったアルバムであり、ヒット曲だけでなく、アルバム全体で80年代初頭アメリカ西海岸ポップの空気を味わうことができる一枚だと思います[11]。

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Citations:

  1. https://www.youtube.com/watch?v=tVdkMQQnrmM
  2. https://robbiedupree.com/about/
  3. https://www.untitledblog.co.uk/post/album-of-the-week-robbie-dupree-robbie-dupree
  4. https://www.westcoast.dk/interviews/interviews-2008/robbie-dupree-2009/
  5. https://www.lewisthomason.com/yacht-rock/
  6. https://www.facebook.com/groups/yachtrock/posts/1619262215395404/
  7. https://robbiedupree.com/discography/
  8. https://en.wikipedia.org/wiki/Hot_Rod_Hearts
  9. https://www.youtube.com/watch?v=CUJ0w2EiJ6U
  10. https://www.popmatters.com/robbie-dupree-street-corner-heroes-2563262141.html
  11. https://www.thehypemagazine.com/2018/05/robbie-dupree-on-re-issuing-his-first-two-albums-yacht-rock-recording-music-for-the-wwf/
  12. https://elpee.jp/album/Robbie%20Dupree/Robbie%20Dupree/
  13. https://www.allmusic.com/album/robbie-dupree-mw0000849051
  14. https://www.facebook.com/groups/478613695592616/posts/5894934087293856/
  15. https://www.facebook.com/groups/yachtrocknation/posts/1023121409527022/
  16. http://www.rockunited.com/just6_dupree.htm
  17. https://www.youtube.com/watch?v=YhnB5JFV4-E
  18. http://blixa.com/index.php/robbie-dupree/
  19. https://en.wikipedia.org/wiki/Robbie_Dupree
  20. https://musictalkers.com/latest-news/4588-first-two-classic-albums-from-legendary-singer-songwriter-and-yacht-rock-sensation-robbie-dupree-to-be-released-on-april-27-by-blixa-sounds
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