ラモーンズ『ラモーンズの激情』

1976年にリリースされたRamones(ラモーンズ)のデビュー・アルバム『Ramones』(邦題:ラモーンズの激情)は、「ロックを最小限の要素まで削ぎ落とし、猛烈なスピードと反復で突きつける」という明快なコンセプトのもとに作られた作品です。
当時の肥大化したロック・シーンに対するアンチとして機能し、のちのパンク・ロックの典型を決定づけたアルバムとして高く評価されています[1]。
『ラモーンズの激情』のコンセプトと制作背景
『ラモーンズの激情』の基本コンセプトは、「短く、速く、シンプル」であることでした。
ほとんどの曲は2分前後で、3コード中心の構成、無駄なソロや展開を徹底的に排除して作られています。
バンドはCBGBなどニューヨークのクラブでの持ち時間20分ほどのステージで、途切れない連射のように曲を畳みかけるスタイルを確立しており、そのライブ感をスタジオに封じ込めることが狙いだったと伝えられています[4]。
このアルバムは、シーモア・スタイン(Seymour Stein)率いるサイアー・レコードと契約して制作されました。
当時サイアーは主にヨーロッパのプログレ系を扱っていましたが、プロデューサーのクレイグ・レオン(Craig Leon)が自らリスクを負ってラモーンズを推し、「とにかくこのバンドを録らせてほしい」と説得したことで、異色の新人としてデビューにこぎつけたとされています[6]。
録音プロセスとエピソード
録音はニューヨークのプラザ・サウンド・スタジオで1976年2月初頭に開始され、スタジオ代約6,400ドル、わずか1週間前後で完了したという低予算・短期決戦でした。
ベーシックなバンドの演奏部分は2〜3日ほどで一気に録られ、その後の数日でジョーイのリード・ボーカルと最小限のオーバーダビングやコーラスが加えられたとされています[7]。
エンジニア側は、極端に大音量で単調に聴こえるこのバンドのサウンドに当初とまどい、やり取りもスムーズではなかったという証言もあります。
しかしレオンは、複数のギターをまとめて1トラックにバウンスし、帯域を選択的に強調するなど、ある種モノラル的な「塊」として聴こえるような工夫を行い、結果として後のパンク像を決定づける独特の音像が完成したと述懐しています[10]。
音楽性・サウンドの特徴
音楽的には、50年代ロックンロール、ガール・グループ、サーフ・ロックなどのポップなエッセンスを、極端に加速させた形で再構成したものだと評されています。
ドラムはフィルや装飾をほとんど排し、メトロノームのように同じビートを刻み、ベースはほぼルート音だけを連打し続けるという極端なミニマリズムが特徴です[3]。
ジョニー・ラモーンのギターは、ほぼすべてダウンピッキングによるコード連打で、アルペジオやソロをほぼ排除したことで、厚い「壁」のようなリズム・ギターとして機能しています。
ジョーイのボーカルは、がなり立てるのではなく、むしろポップなメロディを丁寧に歌っており、その甘さと歌詞の暴力性・退廃性の対比がアルバムの魅力のひとつになっています[8]。
参加ミュージシャンとスタッフ
ラモーンズ
- ジョーイ・ラモーン(Joey Ramone):ボーカル
- ジョニー・ラモーン(Johnny Ramone):ギター
- ディー・ディー・ラモーン(Dee Dee Ramone):ベース
- トミー・ラモーン(Tommy Ramone):ドラムス
追加ミュージシャン
- クレイグ・レオン(Craig Leon):バッキング・ボーカル、ギター、パイプ・オルガン
- ロブ・フリーマン(Rob Freeman):バッキング・ボーカル
- ミッキー・リー(Mickey Leigh):バッキング・ボーカル、ハンド・クラップ
演奏メンバーは、いわゆる「クラシック」な初期ラインナップで、彼らはステージ上と同様、スタジオでも基本的に外部ミュージシャンを使わず、自分たちだけで完結させることにこだわりました[9]。
プロデューサーはクレイグ・レオン、共同プロデューサーとしてサイアー側のアート・スタッフも名を連ねており、エンジニアとしてロブ・フリーマンらが参加しています。
コーラスなど一部には、レオンやエンジニアがさりげなく声を入れているトラックもあり、「I Wanna Be Your Boyfriend」のバック・ボーカルにはバンド外メンバーの声も混ざっているとされています[1]。

トラック・リスト
Side 1
- ブリッツクリーグ・バップ(Blitzkrieg Bop) - 2:13
- ビート・オン・ザ・ブラット(Beat on the Brat) - 2:32
- ジュディ・イズ・ア・パンク(Judy Is a Punk) - 1:32
- アイ・ウォナ・ビー・ユア・ボーイフレンド(I Wanna Be Your Boyfriend) - 2:24
- チェイン・ソウ(Chain Saw) - 1:56
- スニッフ・サム・グルー(Now I Wanna Sniff Some Glue) - 1:36
- ダウン・トゥ・ザ・ベイスメント(I Don't Wanna Go Down to the Basement) - 2:40
Side 2
- ラウドマウス(Loudmouth) - 2:15
- ハヴァナ・アフェアー(Havana Affair) - 1:57
- リッスン・トゥ・マイ・ハート(Listen to My Heart) - 1:58
- 53rd & 3rd(53rd & 3rd) - 2:21
- レッツ・ダンス(Let's Dance) - 1:52
- ウォーク・アラウンド・ウィズ・ユー(I Don't Wanna Walk Around with You) - 1:43
- トゥモロウ・ザ・ワールド(Today Your Love, Tomorrow the World) - 2:17
発表時の反響と評価
アルバムは1976年4月23日にリリースされ、全米チャートでは最高111位と、商業的には決して大ヒットではありませんでしたが、音楽誌や一部批評家からは早い段階で高く評価されました。
ラジオでのオンエアは限られていたものの、ニューヨークのアンダーグラウンド・シーンやイギリスの若いミュージシャンたちに強烈なインパクトを与え、のちのパンク・ムーブメントの起爆剤になったとみなされています[5]。
後年になるほど評価は上昇し、多くのメディアが「史上最も重要なパンク・アルバム」や「ロック史の転換点」としてこの作品を位置づけています。
ロックの殿堂関連の資料や米国議会図書館の保存対象にも選ばれ、文化的・歴史的に重要な録音として公式に認定されている点も特筆すべきところです[2]。
特筆すべき影響とレガシー
『Ramones』は、イギリスのセックス・ピストルズやクラッシュを含む初期パンク・バンドに大きな影響を与えただけでなく、90年代以降のグリーン・デイやニルヴァーナなどオルタナ/グランジ勢にも直接的な参照点として語られています。
「DIY」「低予算」「テクニックよりも衝動と個性」というパンクの精神は、このアルバムの制作プロセスとサウンドにすでに凝縮されていたと言われます[14]。
メンバー全員がラモーン (Ramone) を名乗っていますが、メンバー間に血縁関係はなく本名ではありません。
これは、ポール・マッカートニーがビートルズの前身シルヴァー・ビートルズ時代に使っていた芸名「Paul Ramon」にちなんだもので、ディー・ディー・ラモーンが名付けました。
また、ジャケットに写る4人がレンガ壁の前に直立し、革ジャンとジーンズ姿で並ぶイメージは、パンク・ファッションとバンド像のテンプレートとして、以後数え切れないほど引用されてきました。
音楽面だけでなく、バンドの見た目やスタンスも含めて、「バンドとはこうあるべき」という新しいモデルを提示した点が、『Ramones』を特別な作品たらしめているといえます[4]。

- https://en.wikipedia.org/wiki/Ramones_(album)
- https://consequence.net/2021/04/ramones-ramones-editorial/
- https://www.rhino.com/article/ramones
- https://www.ebsco.com/research-starters/music/ramones-music
- https://www.davegott.com/music/artist/ramones/index.html
- https://theweek.com/93176/danny-fields-on-documenting-the-ramones-debut-album
- https://www.justfortherecord.co.nz/albums/ramones-ramones-2/
- https://www.loc.gov/static/programs/national-recording-preservation-board/documents/Ramones.pdf
- http://justbackdated.blogspot.com/2014/05/ramones-recording-that-classic-first.html
- https://observer.com/2016/04/the-ramones-debut-album-is-still-the-best-punk-record-of-all-time/
- https://dsps.lib.uiowa.edu/downtownpopunderground/story/the-ramones-record-their-debut-album/
- https://www.facebook.com/groups/312924925565944/posts/2618234241701656/
- https://music.fandom.com/wiki/Ramones_(album)
- https://www.simplystick.com.au/blog/fast-loud-and-unstoppable-the-story-of-the-ramones/
- https://www.facebook.com/groups/ramonesforlife/posts/1040011354130184/
- https://dangerousminds.net/comments/back_to_mono_the_ramones_debut_album_is_40_years_old/
- https://www.nytimes.com/2016/03/19/arts/music/ramones-the-story-behind-a-debut-album-from-punk-pioneers.html
- https://rock.fandom.com/wiki/Ramones_(album)
- https://www.rollingstone.com/feature/ramones-debut-lp-10-things-you-didnt-know-234045/4/
- https://grokipedia.com/page/R.A.M.O.N.E.S.


