デイヴ・ブルーベック・カルテット『アット・カーネギー・ホール』

デイヴ・ブルーベック・カルテット(Dave Brubeck Octet)の『At Carnegie Hall』(アット・カーネギー・ホール)は、1963年2月のカーネギー・ホール公演を収めたデイヴ・ブルーベック・カルテットの代表的ライヴ盤であり、多くの評論家から「ブルーベック最良のライヴ」「カルテットの頂点を刻んだ記録」と評価されている作品です。
スタジオ名盤『Time Out』で提示された変拍子ジャズの世界を、長尺のインタープレイとスリリングな即興で一気に解き放ったような内容になっていることが、このアルバムの大きな魅力です[1]。
『アット・カーネギー・ホール』のコンセプトと位置づけ
本作はコンセプト・アルバムというより、「当時のカルテットの実力を余すところなく示す一夜」を丸ごとパッケージ化したドキュメント性の強いライヴ盤として位置づけられます。
セットリストは「St. Louis Blues」や「Pennies from Heaven」といったスタンダードと、『Time Out』以降のオリジナル(「Bossa Nova U.S.A.」「It’s a Raggy Waltz」「Blue Rondo à la Turk」「Take Five」など)が混在し、グループの歴史と当時の最先端を一晩で俯瞰できる構成になっています。
カーネギー・ホールという格式ある会場で、ポピュラリティと前衛性を両立させたモダン・ジャズを提示すること自体が、この夜の「コンセプト」とも言えるものです[2]。
参加ミュージシャンと役割
メンバーはデイヴ・ブルーベック(ピアノ)、ポール・デスモンド(アルト・サックス)、ユージン・ライト(ベース)、ジョー・モレロ(ドラムス)という黄金カルテット期の布陣です。
長年の共演で培われた一体感が頂点に達しており、各人が主役級のソロイストでありながら、全体としては高度に組織だったアンサンブルを聴かせていることが特徴です。
特にデスモンドのクールで透明感のある音色と抒情的なフレージングは、バラード「For All We Know」などで際立ち、カルテットのサウンド・アイデンティティを決定づけています[5]。
- デイヴ・ブルーベック(Dave Brubeck):ピアノ
- ポール・デスモンド(Paul Desmond):アルト・サックス
- ユージン・ライト(Eugene Wright):ベース
- ジョー・モレロ(Joe Morello):ドラムス
音楽性・サウンドの特徴
音楽的には、変拍子の巧妙な扱い、ポリリズム、クラシック的な和声感とブルース・フィーリングが高度に融合している点が大きな特徴です。
「Blue Rondo à la Turk」や「Three to Get Ready」「Eleven-Four」では複雑な拍子を軽やかにスウィングへ転換し、リズムの遊びと緊張感がライヴならではの勢いで展開されます。
音響面では、カーネギー・ホールの残響と観客の反応が生々しく収録されており、シンバルの広がりやベースの胴鳴り、デスモンドのアルトの浮遊感などが立体的に感じられる録音になっています[3]。

代表的トラックと聴きどころ
本作は長尺の名演が多く、「Castilian Drums」でのモレロのドラム・ソロは、しばしば「録音史上屈指のドラム・ソロ」とまで言われるほど圧巻のクライマックスとして語られています。
「King for a Day」ではライトのベースが大きくフィーチャーされ、「Blue Rondo à la Turk」ではテーマの変拍子とソロのブルース展開がスリリングにせめぎ合い、スタジオ版を上回る熱気と自由度が感じられます。
終盤の「Take Five」はテンポが速く、デスモンドのソロもより切実で探求的なニュアンスを帯びており、よく知られたスタジオ・ヴァージョンとの聴き比べが大きな楽しみになっています[6]。
トラック・リスト
Side 1
- セント・ルイス・ブルース(St. Louis Blues) - 11:00
- ボサノヴァ U.S.A.(Bossa Nova U.S.A.) - 7:00
- フォー・オール・ウィ・ノウ(For All We Know) - 5:00
Side 2
- 天国からの銅貨(Pennies from Heaven) - 10:40
- サザン・シーン(Southern Scene) - 7:00
- スリー・トゥ・ゲット・レディ(Three to Get Ready) - 6:50
Side 3
- イレヴン・フォア(Eleven-Four) - 3:00
- 一日だけの王様(King for a Day) - 6:35
- キャスティリアン・ドラムス(Castilian Drums) - 10:13
Side 4
- イッツ・ア・ラギー・ワルツ(It's a Raggy Waltz) - 6:30
- トルコ風ブルー・ロンド(Blue Rondo à la Turk) - 11:50
- テイク・ファイヴ(Take Five) - 6:10
録音・制作エピソードと反響
録音は1963年2月21〜22日にニューヨークのカーネギー・ホールで行われ、コロムビアの敏腕プロデューサー、テオ・マセロ(Teo Macero)が制作を担当しました。
当初、ドラマーのモレロが体調不良だったことや、ニューヨークの新聞ストライキで宣伝が不足していたことから、メンバーは客席の埋まり具合を不安視していたと伝えられています。
実際にはホールは満員となり、カルテットは緊張と興奮の中で相互作用を極限まで高めたパフォーマンスを展開し、その一夜はのちに「キャリア最高のコンサート」と評されるようになりました[9]。

アルバムは発表後、批評家からも高い評価を受け、多くのレビューでブルーベックのスタジオ作品以上に即興性とスリルが感じられるライヴ盤として推奨されています。
一部のジャズ・ピュリストからの懐疑的な見方にもかかわらず、ポリリズムとスウィングを両立させた先駆的ライヴとして、今日ではモダン・ジャズ史上重要な記録のひとつと見なされ、ブルーベック入門のみならず、ライヴ・ジャズの醍醐味を知るうえで必聴の作品となっています[8]。
- https://en.wikipedia.org/wiki/At_Carnegie_Hall_(Dave_Brubeck_Quartet_album)
- https://raggywaltz.com/2019/01/20/at-carnegie-hall-dave-brubeck-columbia-c2s-826/
- https://www.gratefulweb.com/articles/dave-brubeck-at-carnegie-hall-a-night-when-jazz-became-pure-voltage/
- https://www.jazzmessengers.com/en/73229/dave-brubeck/at-carnegie-hall-180-gram
- http://www.davebrubeckjazz.com/recordings/Detail/The-Dave-Brubeck-Quartet-at-Carnegie-Hall/0045
- https://www.allaboutjazz.com/at-carnegie-hall-dave-brubeck-columbia-records-review-by-jim-santella
- http://www.jazzshelf.org/brubeckreview.html
- https://www.analogplanet.com/content/dave-brubeck-quartet-carnegie-hall-issued-double-180g-vinyl
- https://www.highdeftapetransfers.ca/products/the-dave-brubeck-quartet-at-carnegie-hall
- https://www.reddit.com/r/vinyl/comments/1ln04rd/dave_brubeck_quartet_at_carnegie_hall_original/
- https://www.cdjapan.co.jp/product/SICP-5004
- https://www.jazzcat-record.com/?pid=179659813
- https://misterioso.org/?p=278
- https://tower.jp/item/40853
- https://music.apple.com/jp/album/the-dave-brubeck-quartet-at-carnegie-hall/292805486
- http://www.davebrubeckjazz.com/recordings/Detail/Two-Generations-of-Brubeck,----Carnegie-Hall,-New-York,-2-July-1975/00422


