SHARE:

ビル・エヴァンス・トリオ『ムーンビームス』

ビル・エヴァンス・トリオ『ムーンビームス』
ビル・エヴァンス・トリオ(The Bill Evans Trio)『ムーンビームス』(Moon Beams)

The Bill Evans Trio(ビル・エヴァンス・トリオ)のアルバム『Moon Beams』(ムーンビームス)は、1962年に発表された同氏の代表的なピアノ・トリオ作品であり、深い哀愁と再生の物語が込められたアルバムです[1]。

『ムーンビームス』のコンセプトと制作背景

『Moon Beams』は、ベーシストのスコット・ラファロを不慮の事故で失ったエヴァンスが、約1年間の沈黙を破り、チャック・イスラエル(ベース)を新たに迎えて初めてレコーディングしたトリオ作品です。
このアルバムは主にバラードを中心に構成されており、エヴァンスの内省的でリリカルなピアノが前面に押し出されています。
アルバムにはオリジナル曲「Re: Person I Knew」(当時のプロデューサー、オリン・キープニュースのアナグラム)や「Very Early」も収められています。
制作においてはエヴァンスの悲しみや喪失感が色濃く表現されており、“静かな悲しみと癒やし”をテーマに全体がまとめられています[2]。

音楽性・サウンドの特徴

本作では、ピアノ・トリオの伝統的なフォーマットを活かしつつも、エヴァンスの叙情性と繊細なフレージングが特徴的です。
チャック・イスラエルのベースは従来のラファロに比べてやや伝統的で地に足の着いたサポートに徹しており、ドラマーのポール・モチアンと共にエヴァンスを包み込む構図となっています。
アルバムの大部分は1930年代から40年代のスタンダード曲で構成され、テンポは主にゆるやかで、深い余韻や静謐な間が際立っています。
「Polka Dots and Moonbeams」や「I Fall in Love Too Easily」などの名曲で見せるピアノのタッチは、まるで語りかけるかのような親密さです[4]。

参加ミュージシャン

  • ビル・エヴァンス(Bill Evans):ピアノ
  • チャック・イスラエル(Chuck Israels):ベース
  • ポール・モチアン(Paul Motian):ドラムス

この3人によるトリオは、悲しみを乗り越えて新たなアンサンブルの一体感を築き、より洗練されたサウンドを生み出しています[8]。

トラック・リスト

Side 1

  1. リ・パーソン・アイ・ニュー(Re: Person I Knew) - 5:44
  2. ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス(Polka Dots and Moonbeams) - 5:01
  3. アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー(I Fall in Love Too Easily) - 2:42
  4. 星へのきざはし(Stairway to the Stars) - 4:53

Side 2

  1. イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ(If You Could See Me Now) – 4:29
  2. 春の如く(It Might As Well Be Spring) - 6:05
  3. イン・ラヴ・イン・ヴェイン(In Love in Vain) - 5:00
  4. ヴェリー・アーリー(Very Early) - 5:06

制作時のエピソード

レコーディングは1962年5月と6月、ニューヨークで行われました。
イスラエルの加入によりトリオ内のダイナミクスが大きく変化し、エヴァンスがより主導的な立場でピアノを鳴らすようになったとも評されます。
ラファロの死後、エヴァンスは精神的に大きく落ち込みましたが、このアルバムでようやくスタジオに戻り、音楽的に新たな一歩を踏み出したのです[5]。

発表時の反響

発表当時、『Moon Beams』は“ビル・エヴァンスらしい美しさと叙情性が凝縮された作品”と高く評価されました。
批評家の間でも「夢のような作品」「ピアノ・トリオの新たなテンプレート」と評され、エヴァンスのリーダーとしての進化と再出発が明確に示されたと考えられています[11]。

ジャケットデザイン

アルバムジャケットには、後にヴェルヴェット・アンダーグラウンドで有名になるNico(ニコ)がモデルとして起用されています。
その幻想的で静謐なイメージは、アルバムの音楽的コンセプトともシンクロしています[6]。

特筆すべきこと

  • 「Re: Person I Knew」は、プロデューサーのOrrin Keepnews(オリン・キープニュース)の名前をアナグラムにしたものです[1]。​
  • 収録曲の大部分がバラードであることは、エヴァンス自らの悲しみを音楽として昇華しようという意志の現れでした[7]。​
  • 2025年にはCraft Recordingsより高品質なアナログ盤としてリイシューされるなど、現在に至るまで高い人気を誇り続けています[2]。​

『Moon Beams』は、喪失から再生への静かな物語であり、ピアノ・トリオの美学が結晶化した傑作です[7]。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Moon_Beams
  2. https://glidemagazine.com/313673/bill-evans-1962-gentle-masterpiece-moon-beams-gets-vinyl-reissue-album-review/
  3. https://bill-evans.com/moon-beams-the-bill-evans-trio/
  4. https://concord.com/concord-albums/moon-beams-original-jazz-classics-remasters/
  5. https://www.roughtrade.com/product/bill-evans/moon-beams
  6. https://www.audiophilia.com/reviews/2025/6/29/the-bill-evans-trio-moon-beamscraft-original-jazz-classics-vinyl-reissue-2025
  7. https://elusivedisc.com/the-bill-evans-trio-moon-beams-lp/
  8. https://www.jazzwax.com/p/bill-evans-moon-beams-and-interplay-1962html
  9. https://www.youtube.com/watch?v=TgU5LM0IUvI
  10. https://www.allmusic.com/album/moon-beams-mw0000203390
  11. https://www.facebook.com/bsidemadison/posts/60-years-ago-bill-evans-released-moon-beams-the-jazz-pianists-ninth-studio-lp-an/10160672720906111/
  12. https://www.popmatters.com/162876-bill-evans-trio-moonbeams-2495818908.html
  13. https://kaji-jazz.hatenablog.com/entry/2023/06/25/060000
  14. https://ameblo.jp/inoueno2000/entry-12815201040.html
  15. https://jazzdesk.wordpress.com/2025/06/25/bill-evans-trio-without-scott-lafaro/
  16. https://trackingangle.com/music/bill-evans-moon-beams-part-2
  17. https://www.jazzmessengers.com/it/13911/bill-evans/moonbeams
  18. https://www.allaboutjazz.com/news/bill-evans-and-39moon-beams-and-39-and-and-39interplay-and-39-1962/
  19. https://www.albumartexchange.com/covers/665383-moon-beams
  20. https://www.platenzaak.nl/en/products/moon-beams-lp-1
この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ