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キース・ジャレット『ステアケイス』

キース・ジャレット『ステアケイス』
キース・ジャレット(Keith Jarrett)『ステアケイス』(STAIRCASE)

Keith Jarrett(キース・ジャレット)のアルバム『Staircase』(ステアケイス)は、1977年にECMレーベルから発表されたソロ・ピアノ作品であり、その即興性と静謐な音楽性で高い評価を受けている[1]。

『ステアケイス』のコンセプト

本作は「Staircase(階段)」ほか、「Hourglass(砂時計)」「Sundial(日時計)」「Sand(砂)」という異なるタイトルの組曲から成り立っており、本来ひとつのアルバムタイトルというよりは、それぞれの面ごとにタイトルが与えられている構造だと考える論評もある。プロデューサーのマンフレート・アイヒャーとジャレットは元々映画のサウンドトラック録音のためにパリのダヴー・スタジオに入り、録音が早く終了したため余った時間でこのアルバムを即興的に制作した[4]。

音楽性とサウンドの特徴

『ステアケイス』は完全即興による4つの組曲で構成されており、ジャレット独特の詩的でリリカルなタッチや響きが際立つ。従来のライブ・レコーディングとは対照的に、スタジオ録音ゆえの繊細な表現と深いリバーブ感が特徴的である。ファンキーさやゴスペル的要素を抑え、代わりに沈静的で親密な響きが全体を包み込んでいる。「Hourglass Part 2」は特に美しく、14分間にわたり深いリリシズムと静謐な情感を味わうことができる[2]。

制作エピソード

録音は1976年5月、パリのダヴー・スタジオ(Davout Studios)で行われた。ちょうど映画『Mon cœur est rouge(私の心は赤い)』のサントラ録音を終えたばかりのタイミングで、スタジオのスタインウェイ・グランドピアノの素晴らしさに感銘を受け、余った時間を使い一気にセッションが行われた。こうした偶発的かつ一発録りに近い制作経緯がアルバム全体の「今、この瞬間」を捉えた独特の緊張感を生んでいる[6]。

参加ミュージシャン

本作でピアノを演奏しているのはキース・ジャレットのみ。制作にあたってはプロデューサー、マンフレート・アイヒャー、録音エンジニア、ロジャー・ロッシュがスタッフとして参加した[9]。

  • キース・ジャレット(Keith Jarrett):ピアノ
  • マンフレート・アイヒャー(Manfred Eicher):プロデューサー
  • ロジャー・ロッシュ (Roger Roche):レコーディング・エンジニア
  • バーバラ・ウォイルシュ (Barbara Wojirsch):レイアウト、表紙デザイン
  • フランコ・フォンタナ(Franco Fontana):写真

トラック・リスト

Side 1 : Staircase(階段)

  1. Part 1 - 6:57
  2. Part 2 - 7:58
  3. Part 3 - 1:25

Side 2 : Hourglass(砂時計)

  1. Part 1 - 4:42
  2. Part 2 - 14:03

Side 3 : Sundial(日時計)

  1. Part 1 - 8:57
  2. Part 2 - 4:55
  3. Part 3 - 6:27

Side 4 : Sand(砂)

  1. Part 1 - 6:54
  2. Part 2 - 8:48
  3. Part 3 - 3:21

発表時の反響

発表当初の評価は分かれたが、ライブのスリルに勝るとも劣らぬリリカルな表現力を賞賛する声が多かった。AllMusicでは「美しい音色と柔軟なタッチは素晴らしいが、ライブの刺激を欠いており繰り返しが多く感じる面もある」と評された一方、ジャレット伝記作家のWolfgang Sandnerは「音響芸術の驚異的融合」と賛辞を送り、ピアノ・リリシズムの理想に最も近い作品だと評している。一般にはやや地味だが「通好み」の名盤として評価が高い[3]。

ジャケットデザイン

ジャケットデザインはバーバラ・ウォイルシュ、写真はイタリアの写真家、フランコ・フォンタナが担当。外観では「Staircase」の題字が表紙に掲げられているが、開くと各組曲のタイトルが様式的にデザインされており、全体的な抽象性や静謐さを強調している[10]。

特筆すべきポイント

  • 完全即興による組曲形式で、各組曲は明瞭なタイトルと詩的な構成を持つ[1]。
  • スタジオ録音による繊細な音響処理が際立ち、従来のライブ盤とは異なる「内向き」の世界観を持つ[14]。
  • 映画録音の余剰時間から偶発的に生まれた、希有な創作ドキュメントである[6]。
  • ミニマリズム的静けさが特徴で、繰り返し聴くほど深い味わいを感じられる[8]。

『ステアケイス』は、キース・ジャレットの幅広い音楽キャリアのなかでも、ピアノソロ作品として独自の位置づけを持ち、スタジオ即興の極北を示す重要なドキュメントである[2]。

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  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Staircase_(album)
  2. https://ecmreviews.com/2010/12/24/staircase/
  3. http://bristoljazzcrew.blogspot.com/2014/02/review-keith-jarrett-staircase.html
  4. https://note.com/entee_o/n/nbe8ab9286085
  5. https://www.theaudiodb.com/album/2190230-Keith-Jarrett-Staircase
  6. https://www.high-fidelity.lv/preces/ecm-records/ieraksti/keith-jarrett-staircase-2cd
  7. https://organicmusic.jp/en/products/keith-jarrett-staircase-sand-1
  8. https://thefairfieldtrail.wordpress.com/2017/10/21/music-for-autumn-2-keith-jarrett-staircase/
  9. https://ecmrecords.com/product/staircase-keith-jarrett/
  10. http://tralfaz-archives.com/coverart/J/jarrett_stair.html
  11. http://v-matsuwa.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-0f7a57.html
  12. https://www.jazzdisco.org/keith-jarrett/catalog/
  13. https://en.wikipedia.org/wiki/Keith_Jarrett_discography
  14. https://organicmusic.jp/en/products/keith-jarrett-staircase-sand
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