フリートウッド・マック『ファンタスティック・マック』

Fleetwood Mac(フリートウッド・マック)のアルバム『Fleetwood Mac』(邦題:ファンタスティック・マック、1975年)は、バンドの歴史において決定的な変化を象徴する作品です。
新たにリードギターのリンジー・バッキンガムとボーカルのスティーヴィー・ニックスが加わり、従来のブリティッシュ・ブルースから、米国西海岸的なメロディアスなポップロックへと大きくシフトしました[1]。
『ファンタスティック・マック』のコンセプト
本作はバンドの10枚目のスタジオアルバムであり、新生フリートウッド・マックの始動を高らかに告げる“リローンチ作”としての色合いが強く、これまで泥臭いブルース路線だったバンドのサウンドを、より洗練され、感情的な魅力に富んだポップロックへと再構築しています。
この再生は象徴的に「第二のセルフタイトル・アルバム」と位置づけられており、バンド自身のリブランディングといえるでしょう[2]。
音楽性・サウンドの特徴
1975年の『ファンタスティック・マック』は、ゆったりとしたテンポと繊細なアコースティックギター、メロディアスなピアノ、クリアなコーラスによってソフトロックの典型を示しています。
リンジー・バッキンガムの緻密なフィンガーピッキングとパワフルなエレクトリックギター、クリスティン・マクヴィーによる豊かなキーボード、スティーヴィー・ニックスの浮遊感あるヴォーカルが絶妙に絡み合い、“Rhiannon”や“Landslide”では特にそのエモーショナルな表現力が際立っています。
リズム隊のジョン・マクヴィー(ベース)とミック・フリートウッド(ドラム)は堅実かつ柔軟な土台を築き、バンドの音に厚みをもたらしました[4]。
制作時のエピソード
本作の大きなポイントは、プロデューサー兼エンジニアのキース・オルセン(Keith Olsen)の存在です。
サウンド・シティ・スタジオで“Buckingham Nicks”名義で録音された前作デュオ作のウォームで幅広いサウンドに感銘を受けたミック・フリートウッドが、オルセンのプロダクションごとバンドに迎え入れたことが、本作の音の方向性を決定づけました。
ここから「Monday Morning」「Over My Head」「Say You Love Me」「Rhiannon」「Crystal」「Landslide」など、名曲が生まれることになります[5]。
参加ミュージシャン
『ファンタスティック・マック』に参加したメンバーは次の通りです。
- リンジー・バッキンガム(Lindsey Buckingham):ギター、バンジョー、ボーカル
- スティーヴィー・ニックス(Stevie Nicks):ボーカル、タンバリン
- クリスティン・マクヴィー(Christine McVie):キーボード、シンセサイザー、ボーカル
- ジョン・マクヴィー(John McVie):ベース
- ミック・フリートウッド(Mick Fleetwood):ドラムス、パーカッション
この5人編成がその後の“黄金期”の布陣となり、続く『Rumours』(邦題:噂)で頂点を迎えます。
また、ワディ・ワクテル(Waddy Wachtel)が「Sugar Daddy」でリズムギターを担当しています[1]。
トラック・リスト
Side 1
- Monday Morning - マンデイ・モーニング(2:48)
- Warm Ways - ウォーム・ウェイズ(3:53)
- Blue Letter - ブルー・レター(2:41)
- Rhiannon - リアノン(4:10)
- Over My Head - オーヴァー・マイ・ヘッド(3:38)
- Crystal - クリスタル(5:12)
Side 2
- Say You Love Me - セイ・ユー・ラヴ・ミー(4:10)
- Landslide - ランドスライド(3:19)
- World Turning - ワールド・ターニング(4:24)
- Sugar Daddy - シュガー・ダディ(4:09)
- I'm So Afraid - アイム・ソー・アフレイド(4:30)
発表時の反響
本作は発表当初からBillboard 200でチャートインし、最終的には1976年9月に全米1位に到達、58週ものチャート滞在を記録しました。
シングル「Over My Head」「Rhiannon」「Say You Love Me」は全米トップ20入りを果たし、アルバムはアメリカだけで900万枚を超えるセールス(9×プラチナ)となりました。
イギリスでは最高23位と控えめながらも、以降バンドは英米双方で一線級の人気バンドとなります[3]。
ジャケット・デザイン
アルバム・カバーはユーモラスで謎めいた表現が特徴で、ミック・フリートウッドが黒い上着、ジョン・マクヴィーが膝をつく構図で扉の前に立っています。
フリートウッドは杖を持ち、ワイングラスを飲み、マクヴィーは水晶玉を見上げています。
この水晶玉には二人がぼんやりと反射し、幻想的な雰囲気を演出。
ドアの上部に表示されている「Fleetwood Mac」の文字フォントデザインはラリー・ヴィゴン(Larry Vigon)が手掛けており、“扉を囲み構図に調和する字体”を目指して何案も手描きで作成されました[1]。

特筆すべきこと
- バンド史上最初の本格的“メジャー・ブレイク”となった作品であり、続く『Rumours』を含む黄金期への序章となりました[4]。
- “Fleetwood Mac”名義のアルバムは2枚(1968年、1975年)が存在する珍しいケースです。
1975年作は“ホワイト・アルバム”と称され、バンドの新しい章の始まりを象徴します[2]。 - 本作によって、ブルース主導から男女混合ボーカルによる優美なポップロック路線へと路線転換したことは、1970年代アメリカンロックの大潮流を作るきっかけとなりました[7]。
このように、1975年の『ファンタスティック・マック』は、サウンドもバンド体制も生まれ変わった、名実ともに“バンド再生の金字塔”としてロック史に刻まれています[3]。



- https://en.wikipedia.org/wiki/Fleetwood_Mac_(1975_album)
- https://www.subjectivesounds.com/musicblog/fleetwood-mac-1975-album-review
- https://pure-music.co.uk/1975-fleetwood-mac-album-cover/
- https://www.antimusic.com/news/25/0707fleetwood_mac_in_the_studio_for_blockbuster_1975_albums_50th_anniversary.shtml
- https://www.fleetwoodmacnews.com/2020/07/fleetwood-macs-1975-album-fleetwood-mac.html
- https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Fleetwood_Mac_members
- https://www.fleetwoodmad.co.uk/post/rumors-and-revelations-20-bizarre-and-little-known-facts-about-fleetwood-mac
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AF
- https://ultimateclassicrock.com/fleetwood-mac-faq-book-excerpt/
- https://www.rollingstone.com/feature/fleetwood-macs-rumours-10-things-you-didnt-know-121876/
- https://www.britannica.com/topic/Fleetwood-Mac
- https://en.wikipedia.org/wiki/Fleetwood_Mac_(1968_album)
- https://www.undertheradarmag.com/reviews/1975_to_1987_fleetwood_mac
- https://tower.jp/article/feature_item/2025/01/31/0105
- https://en.wikipedia.org/wiki/Rumours_(album)
- https://www.guitarplayer.com/guitarists/lindsey-buckingham-on-fleetwood-mac-s-50-year-old-breakthrough-album
- https://ultimateclassicrock.com/fleetwood-mac-fleetwood-mac-album/
- https://www.reddit.com/r/FleetwoodMac/comments/1cqenwp/fleetwood_mac_never_quite_nailed_the_whole_album/
- https://www.imdb.com/name/nm1393605/trivia/
- https://music.amazon.co.jp/podcasts/ebb8dfb0-f76d-42df-8d4f-450eaac34496/episodes/8df26239-4ee3-49df-892c-b053cf821923/discovery-with-eric-senich-episode-25-fleetwood-mac's-1975-self-titled-album


