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トミー・フラナガン『オーヴァーシーズ』

トミー・フラナガン『オーヴァーシーズ』
トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)『オーヴァーシーズ』(Overseas)

1958年にリリースされたTommy Flanagan Trio(トミー・フラナガン・トリオ)のアルバム『Overseas』(オーヴァーシーズ)は、ジャズ・ピアノ・トリオの金字塔と称される作品で、リーダー作としてのフラナガンの独自性、音楽性、そしてアメリカ東海岸ジャズの洗練されたバップ美学が瑞々しく刻まれています[1]。

『Overseas』(オーヴァーシーズ)のコンセプトと制作背景

『オーヴァーシーズ』は、フラナガンがJ.J.ジョンソン(トロンボーン)のバンドでヨーロッパをツアー中、スウェーデン・ストックホルムで1957年8月15日に録音した初のリーダー・アルバムです。
同行していたベーシストのウィルバー・リトル(Wilbur Little)とドラマーのエルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)という精鋭リズム隊を迎え、レコーディングが実施されました。
本作は全9曲中6曲がフラナガン自身のオリジナルで、リーダーとしての意欲的な姿勢が現れています。「Overseas(海外)」というタイトルには、アメリカ国外での創造的冒険という意味合いも込められています[2]。

音楽性とサウンドの特徴

フラナガンは、ビル・エヴァンスやオスカー・ピーターソンと並んでクリアでリリカルなタッチを持つピアニストですが、本作では人懐っこいバップ・フレーズとメロディの美しさ、そしてリズムセクションのダイナミズムが際立っています。
エルヴィン・ジョーンズのブラシワークやリトルのスウィンギーなベースがフラナガンのピアノを巧みにサポートし、活気と内省、両面を持つトリオ・サウンドを表現しています[1]。

特にフラナガンの特徴的なレガート奏法や、楽曲「Eclypso」「Verdandi」などの独特のハーモニー進行、そしてストレイホーン作「Chelsea Bridge」やパーカー作「Relaxin' at Camarillo」といったスタンダード曲の洗練された解釈が光ります。
フラナガンの演奏は「遊び心と優美さ、そして強いビート感を併せ持つバップの華」とも評され、技巧に偏らない品の良さが聴きどころです[2]。

制作時のエピソード

フラナガンが初のリーダー録音を任された背景には、当時、名脇役として数々の名演に参加していたが、主役としてスポットライトを浴びる機会が少なかったという事情があります。
ストックホルムのMetronome Studioで一発録り的な緊張感と自由さにあふれ、旅先ならではの伸びやかで開放的な雰囲気がアルバム全体に流れています[4]。

参加ミュージシャン

  • トミー・フラナガン(Tommy Flanagan): ピアノ
  • ウィルバー・リトル(Wilbur Little): ベース
  • エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones): ドラムス

いずれもJ.J.ジョンソン・クインテットのリズム隊で、後のジャズ・シーンで大いに活躍するミュージシャンが揃っています。
エルヴィン・ジョーンズは特に、多様なリズム表現とブラシさばきが本作でも光る存在です[1]。

トラック・リスト

Side 1

  1. Relaxin’ At Camarillo(リラクシン・アット・カマリロ) - 3:20
  2. Chelsea Bridge(チェルシー・ブリッジ) - 3:45
  3. Eclypso(エクリプソ) - 6:00
  4. Beat's Up(ビーツ・アップ) - 4:20
  5. Skål Brothers(スコール・ブラザース) - 2:30

Side 2

  1. Little Rock(リトル・ロック) - 7:00
  2. Verdandi(ヴェルダンディ) - 2:10
  3. Dalarna(ダラーナ) - 4:35
  4. Willow Weep For Me(柳よ泣いておくれ) - 6:20

発表時の反響とその後の評価

Prestige Recordsからリリースされた本作は、「フラナガンは洗練されたタッチと端正なメロディライン」を持つ、として当初から批評家・ファン双方に高い評価を受けました。
以後、数十年にわたり様々なエディションや再発盤が作られるなど、ジャズ・ピアノ・トリオの定番作、ベスト盤の一つとして認められています。
また、フラナガン自身が後年の作品(『Sea Changes』)で自作曲を再演するほど、本作への思い入れも強いことが窺えます[2]。

特筆すべきポイント

  • フラナガン自身のオリジナル曲が多数収録されている初期作品であり、個性を強く打ち出した重要作[1]。
  • 終生の盟友となるエルヴィン・ジョーンズとの最初期の記録であり、両者のインタープレイがジャズ史的にも価値が高い[2]。
  • 「Dalarna」や「Eclypso」など、後年まで再演される名曲を含む[1]。
  • ピアノ・トリオ・ジャズの美学と瑞々しさを伝える、1950年代東海岸ジャズの一つの典型例として位置づけられる[2]。

『オーヴァーシーズ』は、緻密さと詩情、そしてスウィングが絶妙に同居した名盤であり、モダン・ジャズの歴史に残る重要作です[1]。

Import
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  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Overseas_(album)
  2. https://londonjazzcollector.wordpress.com/2014/06/09/tommy-flanagan-overseas-1957-japan-1977/
  3. https://my-lp-record.com/lp_record_sub_page.php?menu_code=rvg&page_no=7700
  4. https://vmatsuwa.cocolog-nifty.com/piano/2013/03/tommy-flanagan-.html
  5. https://kubo.sakuraweb.com/wp/archives/5344
  6. https://ameblo.jp/1961vanguard/entry-10407734506.html
  7. https://kimama-music.com/tommy-flanagan-trio-overseas/
  8. https://en.wikipedia.org/wiki/Tommy_Flanagan_(musician)
  9. http://blog.livedoor.jp/sharp_of_jazz_2_come/archives/58674.html
  10. https://www.jazzmessengers.com/en/8011/tommy-flanagan/complete-overseas-session
  11. https://jazzclub-overseas.com/oshirase/blog/tag/tommy-flanagan/
  12. https://urarakaaudio.com/tommy-flanagan-overseas/
  13. https://dailymusiclog.hatenablog.com/entry/2023/06/07/074130
  14. https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1007839884
  15. https://www.julienfraipont.be/post/tommy-flanagan-overseas
  16. https://dailymusiclog.hatenablog.com/entry/2024/11/23/200744
  17. http://jazzclub-overseas.com/tamae/2017/11/14/post_145/
  18. https://www.electricrecordingco.com/news/2016-10-11-erc021-tommy-flanagan-trio-overseas
  19. http://www.fwrarejazzvinylcollector.com/blog/2017/11/18/tommy-flanagan-trio-overseas-on-prlp-7134
  20. https://100jazztrio.com/release/overseas/
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