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ボブ・ディラン『ナッシュヴィル・スカイライン』

ボブ・ディラン『ナッシュヴィル・スカイライン』
ボブ・ディラン(Bob Dylan)『ナッシュヴィル・スカイライン』(Nashville Skyline)

1969年に発表された『Nashville Skyline』(ナッシュヴィル・スカイライン)は、Bob Dylan(ボブ・ディラン)の9作目のスタジオ・アルバムであり、彼のキャリアにおいて大きな転換点となった作品です。

『ナッシュヴィル・スカイライン』のコンセプト

本作の最大の特徴は、ディランが徹底してカントリー・ミュージックに傾倒した点にあります。前作『John Wesley Harding』で既にカントリー色を見せていましたが、『ナッシュヴィル・スカイライン』ではその傾向がさらに強まり、全編にわたってカントリーの伝統的なサウンドとシンプルな歌詞、穏やかな雰囲気が貫かれています[1][2][3]。

このアルバムの制作には、ディランが長年リスペクトしてきたカントリー界の大御所、ジョニー・キャッシュが深く関わっており、彼とのデュエット「Girl from the North Country」で幕を開けます。アルバム全体を通して、愛や日常、素朴な幸福感といったテーマが中心となっており、従来の社会的・政治的メッセージから一線を画しています[2][3][4]。

音楽性・サウンドの特徴

『ナッシュヴィル・スカイライン』の音楽性は、以下の点で従来のディラン作品と大きく異なります。

  • ヴォーカルの変化
    ディランは本作で、それまでの「しゃがれ声」から一転し、柔らかく滑らかなカントリー調の歌唱法を披露しました。これは一時的に禁煙したことも影響しており、甘く温かみのある声がアルバム全体を包み込んでいます[2][4][5]。
  • シンプルな楽曲構成
    複雑なメッセージや比喩を多用した過去の作品とは異なり、シンプルな構成とストレートな歌詞が特徴です。愛や人生の喜び、失恋などを素直に歌い上げています[2][3][4]。
  • 伝統的なカントリー・サウンド
    ペダル・スティールギター、ドブロ、ピアノなど、ナッシュビルの名手たちによる演奏が随所に光ります。リズムも穏やかで、全体的に温かみのあるサウンドが印象的です[2][3][6][7]。
  • 代表曲
    「Lay Lady Lay」は本来映画『真夜中のカーボーイ』のために書かれたもので、官能的かつ優しいメロディが特徴。全米7位のヒットとなり、ディランの代表曲のひとつとなりました[1][4]。

制作時のエピソード

  • ジョニー・キャッシュとの共演
    ディランとキャッシュは以前から互いにリスペクトし合っており、プロデューサーのボブ・ジョンストンが両者をスタジオに「偶然」同席させることでコラボレーションが実現しました。二人は即興で18曲ものデュエットを録音したと伝えられています[8]。
  • ナッシュビル録音の意義
    当時のナッシュビルの音楽シーンは保守的でしたが、ディランの登場によって新しい風が吹き込まれ、カントリーロックという新たなジャンルの発展に大きく貢献しました。クリス・クリストファーソンは「ディランがナッシュビルに来たことで、私たちの世代は芸術的な自由を得た」と語っています[2][9][10]。
  • 録音スタイル
    通常は4時間で3曲録るのが慣例だったナッシュビルのスタジオで、ディランは気ままに曲を書きながら録音を進め、セッション・ミュージシャンたちは深夜まで待機することもあったといいます[11]。

トラック・リスト

Side 1

  1. 北国の少女(Girl from the North Country) - 3:41
  2. ナッシュヴィル・スカイライン・ラグ(Nashville Skyline Rag) - 3:12
  3. トゥ・ビー・アローン・ウィズ・ユー(To Be Alone with You) - 2:05
  4. アイ・スリュー・イット・オール・アウェイ(I Threw It All Away) - 2:23
  5. ペキー・デイ(Peggy Day) - 1:59

Side 2

  1. レイ・レディ・レイ(Lay Lady Lay) - 3:20
  2. ワン・モア・ナイト(One More Night) - 2:25
  3. 嘘だと言っておくれ(Tell Me That It Isn't True) - 2:45
  4. カントリー・パイ(Country Pie) - 1:35
  5. 今宵はきみと(Tonight I'll Be Staying Here With You) - 3:23

参加ミュージシャン

『ナッシュヴィル・スカイライン』には、ナッシュビルの一流セッション・ミュージシャンが多数参加しています。

  • ボブ・ディラン(Bob Dylan):ボーカル、ギター、ハーモニカ
  • ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash):「Girl from the North Country」のボーカルとギター
  • ノーマン・ブレイク(Norman Blake):ギター、ドブロギター
  • フレッド・カーター・ジュニア(Fred Carter Jr.):ギター
  • チャーリー・マッコイ(Charlie McCoy):ギター、ハーモニカ
  • ボブ・ウートン(Bob Wootton):「Girl from the North Country」のエレキギター
  • チャーリー・ダニエルズ(Charlie Daniels):ベース、ギター
  • マーシャル・グラント(Marshall Grant):「Girl from the North Country」のベースギター
  • ボブ・ウィルソン (Bob Wilson):オルガン、ピアノ
  • ケネス・A・バトリー(Kenneth A. Buttrey):ドラム、ボンゴ、カウベル
  • W. S. ホランド(W. S. Holland):「Girl from the North Country」のドラム
  • ピート・ドレイク(Pete Drake):ペダル・スティール・ギター

この豪華な布陣が、アルバムの温かく洗練されたカントリー・サウンドを支えています[2][3][6][7][10]。

発表時の反響

  • 商業的成功
    アルバムは全米ビルボード3位、全英1位を記録し、プラチナディスクにも認定されました[1][2][12]。「Lay Lady Lay」はシングルでも大ヒットとなり、ディランにとって久々のトップ10入りとなりました[1][10]。
  • 批評家の評価
    発表当初は賛否両論ありましたが、次第に「ディランの新たな挑戦」として高く評価されるようになり、現在では彼の代表作の一つと見なされています[6][13][14]。
  • 音楽界への影響
    ディランのカントリーへのアプローチは、ロックとカントリーの垣根を越えるきっかけとなり、以降のカントリーロックやアメリカーナの発展に大きな影響を与えました[9][10]。

特筆すべきこと

  • ヴォーカルの劇的変化
    ディランの歌声の変化は当時大きな話題となり、「本当にディランが歌っているのか?」と疑う声もあったほどです[5]。
  • ジョニー・キャッシュとのデュエット
    「Girl from the North Country」は、二人の個性が見事に融合した名演であり、アルバムの象徴的な一曲です[2][3][8]。
  • ジャンルの壁を越えた作品
    『Nashville Skyline』は、フォーク、ロック、カントリーの融合を実現し、音楽史における重要なマイルストーンとなりました[2][9][10]。
  • シンプルで普遍的なメッセージ
    「愛こそがすべて」というテーマがアルバム全体を貫き、時代やジャンルを超えて多くのリスナーに愛されています[3][4]。

『Nashville Skyline』は、ボブ・ディランの音楽的冒険心と時代を超えた普遍性を象徴するアルバムです。その温かみのあるサウンドとシンプルなメッセージは、今なお多くの人々に新鮮な感動を与え続けています。

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  1. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3
  2. https://en.wikipedia.org/wiki/Nashville_Skyline
  3. https://americansongwriter.com/on-this-day-in-1969-bob-dylan-released-the-highly-influential-country-leaning-album-nashville-skyline/
  4. https://www.pastemagazine.com/music/bob-dylan/time-capsule-bob-dylan-nashville-skyline
  5. https://faroutmagazine.co.uk/bob-dylan-sound-different-nashville-skyline/
  6. https://guitarsexchange.com/en/unplugged/717/bob-dylan-nashville-skyline-1969/
  7. https://www.wideopencountry.com/bob-dylans-nashville-skyline-lasting-impact/
  8. https://americansongwriter.com/ash-tray-drums-fake-cafes-and-4-other-oddities-of-bob-dylans-nashville-skyline/
  9. https://eu.tennessean.com/story/entertainment/music/2019/06/28/bob-dylan-nashville-skyline-50-year-anniversary/1509846001/
  10. https://theboot.com/bob-dylan-nashville-skyline/
  11. https://americanahighways.org/2019/11/25/nashville-skyline-revisited-recalling-bob-dylans-sessions-travelin-thru/
  12. https://www.britannica.com/topic/Nashville-Skyline
  13. https://culture.fandom.com/wiki/Nashville_Skyline
  14. https://www.wikiwand.com/en/articles/Nashville_Skyline
  15. https://www.reddit.com/r/bobdylan/comments/xvdv03/what_are_dylans_concept_albums/
  16. https://y240.exblog.jp/9815912/
  17. https://www.rollingstone.com/music/music-news/bob-dylan-bootleg-series-johnny-cash-nashville-skyline-john-wesley-harding-886719/
  18. https://peterstonebrownarchives.substack.com/p/looking-back-on-nashville-skyline
  19. https://www.reddit.com/r/bobdylan/comments/prsj40/personal_album_rankings_1339_nashville_skyline/
  20. https://faroutmagazine.co.uk/10-greatest-session-musicians-bob-dylan/
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