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パーシー・スレッジ『男が女を愛する時』

パーシー・スレッジ『男が女を愛する時』
パーシー・スレッジ(Percy Sledge)『男が女を愛する時』(When a Man Loves a Woman)

Percy Sledge(パーシー・スレッジ)の『When a Man Loves a Woman』(邦題:男が女を愛する時)は、タイトル曲のあまりの大ヒットゆえに「1曲のアルバム」と思われがちですが、南部ソウルの本質がぎゅっと凝縮された、感情表現のアルバムとして非常に味わい深い作品です[1][2]。​​

『男が女を愛する時』の位置づけとコンセプト

アルバム『When a Man Loves a Woman』は、1966年にアトランティックからリリースされたパーシー・スレッジのデビュー・アルバムです。
タイトル曲の世界的成功を受け、そのムードとボーカル・スタイルを軸に、失恋、献身的な愛、悩める男心といったテーマのバラードを中心に構成した作品になっています[1][2]。
もともと農場労働や病院の雑役係として働きながら、週末だけソウル・シンガーとして活動していた彼の半生が、そのまま楽曲の「庶民的な痛み」と「祈るような歌いぶり」に投影されていることが、このアルバム全体のコンセプトを決定づけています[3]。

音楽性・サウンドの特徴

音楽的には、マッスル・ショールズ周辺のスタジオ・ミュージシャンによる南部ソウル・サウンドが土台になっています。
ゴスペル由来のコブシを効かせたスレッジのディープなボーカルに、教会音楽にも通じるオルガン、リズム&ブルースのギター、リズム隊、ホーン・セクションが絡むことで、シンプルながら奥行きのあるグルーヴが生まれています[4][1]。
テンポは総じてミディアム〜スローが中心で、シャウト一辺倒ではなく、囁き・溜め・叫びを巧みに行き来する表現が特徴です。
タイトル曲で聴ける、途中でぐっと音数を減らし、声の震えとホーンの合いの手で感情を高めていく構成は、その後のサザン・ソウル・バラードの一つの雛形になったと言われています[5]。

制作エピソードと録音環境

代表曲「When a Man Loves a Woman」は、もともとスレッジ自身が失恋の痛みを歌にしてステージで歌っていたものが原型で、失業と恋人との別れという自身の経験が直接のインスピレーションになっていました。
その後、バンド仲間だったベーシストのカルヴィン・ルイスとオルガニストのアンドリュー・ライトが曲作りを手伝い、クレジットはふたりの名義で登録されています[6]。
録音は当初、マッスル・ショールズのFAMEスタジオで試みられた後、アラバマ州シェフィールドのノーララ・サウンド・スタジオで録り直されました。
スレッジはこのセッションがほぼ初めての本格的なスタジオ経験で、マイクの扱い方さえ知らず、エンジニアや周囲のミュージシャンがサポートしながら録音を進めたと回想されています。
しかし実際にテイクが録れた瞬間、エンジニアたちは「背筋が震えた」と語るほどの集中と感情がテープに焼き付けられたといいます[1][4]。

参加ミュージシャンとアレンジ

タイトル曲のセッションには、のちに「マッスル・ショールズ・サウンド」を象徴することになる面々が参加しています[1][4]。
主なクレジットは以下の通りです。

  • パーシー・スレッジ(Percy Sledge):ヴォーカル
  • スプーナー・オールダム(Spooner Oldham):オルガン
  • マーリン・グリーン(Marlin Greene):ギター、コ・プロデューサー
  • アルバート・"ジュニア"・ロウ(Albert “Junior” Lowe):ベース
  • ロジャー・ホーキンス(Roger Hawkins):ドラムス
  • ジャック・ペック(Jack Peck):トランペット
  • ビリー・コフィールド(Billy Cofield)、ドン・“リム”・ポラード(Don “Rim” Pollard):テナーサックス
  • ジェリー・エドルマン(Jerry Eddleman)、ジーニー・グリーン(Jeanie Greene)、サンディ・ポージー(Sandy Posey)、ハーシェル・ウィギントン(Hershel Wiggington) – バックボーカル

プロデュースはクイン・アイヴィ(Quin Ivy)とマーリン・グリーンが担当し、バッキングはホーン・セクションとオルガンを要にした、いかにも南部ソウルらしい編成になっています。
彼らはFAMEスタジオ周辺のハウスバンド的存在であり、後にアレサ・フランクリンやローリング・ストーンズらを支えることになる職人たちでもあります[1][7]。

トラック・リスト

Side 1

  1. 男が女を愛するとき(When a Man Loves a Woman) - 2:55
  2. マイ・アドラブル・ワン(My Adorable One) - 2:42
  3. ひとかけらの愛(Put a Little Lovin' on Me) - 2:43
  4. ラブ・ミー・オールザ・ウェイ(Love Me All the Way) - 2:30
  5. 彼女の手がふれるとき(When She Touches Me (Nothing Else Matters)) - 2:32
  6. 泣きっつらにハチ(You're Pouring Water on a Drowning Man) - 2:22

Side 2

  1. 夜の盗賊(Thief in the Night) - 2:25
  2. ユー・フルド・ミー(You Fooled Me) - 2:34
  3. 愛のひろがり(Love Makes the World Go Round) - 2:40
  4. サクセス(Success) - 3:00
  5. ラブ・ミー・ライク・ユー・ミーン・イット(Love Me Like You Mean It) - 2:30

発表時の反響と評価

シングル「When a Man Loves a Woman」は1966年にリリースされ、全米ビルボード・Hot 100とR&Bチャートの両方で1位を獲得し、アトランティック・レコードにとって初のゴールド・ディスクとなりました。
これはマッスル・ショールズ地域から生まれた最初の全米1位のヒットでもあり、その土地をソウル/ロック録音の聖地として世界に知らしめるきっかけにもなっています[3]。
曲はイギリスでも1966年にトップ10入りし、1980年代にはジーンズのCMで再ヒット、再びチャート上位に食い込むなど、世代を超えて愛され続けるスタンダードとなりました。
1999年には、オリジナル録音がグラミー殿堂入りを果たしており、後年のローリング・ストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング」リストでも上位にランクインしています[3]。

特筆すべきポイント

特筆すべきは、まずこの曲が「アトランティックの初ゴールド・シングル」であり、同時にマッスル・ショールズから生まれた最初の全米No.1ヒットであったという歴史的意義です。
ひとりの地方シンガーの失恋の歌が、レーベルと地域のサウンドの運命を変えてしまったという点で、まさに象徴的な1曲を冠したアルバムだと言えます[5]。
また、スレッジは自身のアイデアから生まれた曲でありながら、共作者にソングライティング・クレジットを譲ったため、印税面では大きな利益を逃したとも語られています。
それでもなお彼は終生この曲とアルバムを歌い続け、のちにロックの殿堂入りを果たすまでに至ったことから、この作品が単なるヒット商品ではなく、本人の人生そのものを刻んだ告白的ソウル・アルバムとして受け止められているのが興味深いところです[1][6]。​

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[1] https://www.youtube.com/watch?v=nLuk8ZNPXCc
[2] https://music.apple.com/ae/album/when-a-man-loves-a-woman/59411968
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Percy_Sledge
[4] https://en.wikipedia.org/wiki/When_a_Man_Loves_a_Woman_(song)
[5] https://www.udiscovermusic.com/stories/percy-sledge-man-loves-woman/
[6] https://www.cbsnews.com/news/single-session-launched-percy-sledge-no-1-hit-and-a-sound/
[7] https://www.npr.org/2020/02/20/807344091/synonymous-with-soul-percy-sledge-transcended-the-muscle-shoals-sound

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