イエス(YES)の『危機』です。
原題は『Close To The Edge』。
1972年にリリースされました。
ヴォーカルのジョン・アンダーソンが、お釈迦様が悟りを開くまでを描いた『シッダールタ』というヘルマン・ヘッセの小説からインスパイアされて制作されたといいます。
1曲目は彼らの最高傑作といわれアルバムタイトルにもなっている「危機」。
レコードのA面は18分を超える、これ1曲だけという大曲。
小鳥のさえずりや小川のせせらぎのような音が入っているが、恐らくアルバムの見開きに描かれたロジャー・ディーンの手による幻想的なイラストのような景色をイメージしたのだろう。
そこにはギニア高地のテーブルマウンテンのような平らな台地が水で満たされ、その水が周辺のエッジの先端(つまり、Close To The Edge)から流れ落ちている世界が描かれている。
そうした、のどかな効果音から、一転して緊張感のあるギターのリフとドラマティックなベース、激しいドラムへと展開していく、そこに様々な音色のキーボードが入り、その後も、複雑なリズムと転調を繰り返し、緩急のあるクラシックの交響曲のような構成で、最後はまた小鳥のさえずりや水の流れる音へと戻っていく。
全編、こんな感じでトータルとしてクラシックの組曲のように聴くことができる。
そのまま、オーケストラでやってもよさそうである。
そういう意味ではロックとはいえ、EL&Pと並んで、ブルースや土臭さとは対極にあるようなロックであり、クラシック好きのインテリっぽい人にファンが多かったというのは、よくわかる気がする。(EL&Pは、まんま、クラシックだし)
全員がテクニックで売ってるようなメンバーたちだが、こんな音楽を5人でやってしまうというのは、すごいものだ。
ちなみに家にある、レコードにはA面に1曲、B面には2曲と、トータル3曲しか入っていない。
CDのリマスター版には、サイモンとガーファンクルのアメリカをカバーした作品やレコードの最後の曲となっているシベリアン・カートゥルのシングルバージョンなども含めて7曲入っている。
そのためかCDで聴いたときに4曲目のアメリカを聴くと、なんか違和感を感じる。
トラックリスト
- 危機(Close To The Edge)
- 着実な変革(The Solid Time Of Change)
- 全体保持(Total Mass Retain)
- 盛衰(I Get Up, I Get Down
- 人の四季(Seasons Of A Man)
- 同志(And You And I)
- 人生の絆(Cord Of Life)
- 失墜(Eclipse)
- 牧師と教師 (The Preacher, The Teacher)
- 黙示(Apocalypse)
- シベリアン・カートゥル(Siberian Khatru)
- アメリカ(America)[single version]
- 全体保持(Total Mass Retain) [single version]
- 同志(And You And I)[alternate version] -
- (Cord Of Life)
- (Eclipse)
- (The Preacher, The Teacher)
- (Apocalypse)
- シベリア(Siberia)[studio run-through of "Siberian Khatru"]※レコードの場合は最初の3曲を収録。
※リリース:1972年
パーソネル
- ジョン・アンダーソン(Jon Anderson) – lead vocals
- スティーヴ・ハウ(Steve Howe) – guitars, vocals
- クリス・スクワイア(Chris Squire) – bass, vocals
- ビル・ブルーフォード(Bill Bruford) – drums, percussion
- リック・ウェイクマン(Rick Wakeman) – keyboards, piano