ライブ盤として名盤の誉れ高いダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)の『ライブ(LIVE)』である。
実はこのアルバム、レコードの場合だけどA面とB面では、録音された場所も違うしプロデューサーも参加ミュージシャンも違うのである。
残念ながらCDやダウンロードが主流となった今では、ミュージシャンや制作者の、こうした意図や工夫がなかなか伝わりにくくなってしまった。
それでも意識して聴くと、その違いがよくわかるから聴き比べると面白い。
1~4曲(A面)はハリウッドのトルバドール、5~8曲(B面)はマンハッタンのビターエンドという店でのパフォーマンス。
どちらも、錚々たるミュージシャンがホームグランドにしたアメリカの西部と東部を代表するナイトクラブだ。
トルバドールでのライブは客席との一体感のあるクラッピングや歓声、歌い声が盛大に入っていて、めちゃくちゃ高揚感がある。
あー、こういうグルーブ感はたまらない!
豊饒な音楽の空間に身をゆだねれば、すべてから解放される。
カタルシスを感じるとは、こういうことをいうのでないだろうか。
一方のビターエンドはニューヨークという場所柄のせいか洗練された感じで、こちらの方がクリアに録音されている。
全編にわたりダニー・ハサウェイのエレピが効いている。
参加しているミュージシャンも、今じゃあ大御所といわれる人たちだ。
1~4曲のギターはフィル・アップチャーチのファンキーな切れの良いプレイ、5~8曲のギターはコーネル・デュプリーでノーブルな雰囲気。
ベースは両方ともウィリー・ウィークス。
このアルバムの最後の曲で彼は2分を超えるベースソロを聴かせているが、これは彼のベストプレイと言われている。
マーヴィン・ゲイの「What's Goin' On」、キャロル・キングの「You've Got a Friend」、ジョン・レノン「Jealous Guy」といった超名曲のスタンダードもソウルフルに聴かせる。
リリース:1972年
トラックリスト
- What's Goin' On (Renaldo "Obie" Benson, Al Cleveland, Marvin Gaye) – 5:18
- The Ghetto (Donny Hathaway, Leroy Hutson) – 12:08
- Hey Girl (Earl DeRouen) – 4:03
- You've Got a Friend (Carole King) – 4:34
- Little Ghetto Boy (Derouen, Eddy Howard) – 4:29
- We're Still Friends (Hathaway, Watts) – 5:12
- Jealous Guy (John Lennon) – 3:08
- Voices Inside (Everything Is Everything) (Richard Evans, Philip Upchurch, Ric Powell) – 13:47
パーソネル
ミュージシャン
- Donny Hathaway – vocals, electric piano, piano, organ, arrangements
- Phil Upchurch – lead guitar on Side 1
- Cornell Dupree – lead guitar on Side 2
- Mike Howard – guitar
- Willie Weeks – bass
- Fred White – drums
- Earl DeRouen – conga drums
プロデューサー
- Arif Mardin (Side 1[1~4])
- Jerry Wexler & Arif Mardin (Side 2[5~8])
エンジニア
- Ray Thompson – recording engineer on Side 1[1~4]
- Tom Fly – recording engineer on Side 2[5~8]