Donny Hathaway(ダニー・ハサウェイ)の『LIVE』(ライブ)は、1972年にアトランティック・レーベルからリリースされた、ソウルミュージックの金字塔とも言える作品です。このアルバムは、ハリウッドのトルバドール(The Troubadour)とニューヨークのビター・エンド(The Bitter End)という2つの有名なクラブで録音されました[6]。
コンセプトと音楽性
『LIVE』は、ハサウェイの生の演奏力と感情豊かな歌声を捉えた、非常にエネルギッシュで複雑さのない作品です[1]。このアルバムは、ハサウェイの才能を最大限に引き出し、彼のソウルフルな声とピアノの演奏、そして優れたバンドとの相互作用を見事に記録しています。
アルバムには、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の「What's Going On」やキャロル・キング(Carole King)の「You've Got a Friend」、ジョン・レノン(John Lennon)の「Jealous Guy」といった当時の人気曲のカバーと、ハサウェイ自身の楽曲が収録されています[6][10]。
サウンドの特徴
- ライブ感: アルバムは、観客の反応や歓声を含め、ライブパフォーマンスの臨場感を見事に捉えています[1]。
- ジャムセッション: 「The Ghetto」や「Voices Inside (Everything Is Everything)」などの曲では、長尺のジャムセッションが展開され、バンドの即興演奏力が存分に発揮されています[10]。
- ゴスペル的要素: ハサウェイのルーツであるゴスペルの影響が、特に「You've Got a Friend」のような曲で顕著に表れています[10]。
- ジャズの要素: バンドの演奏には、ジャズの影響も強く感じられます[3]。
制作時のエピソード
プロデューサーのアリフ・マーディン(Arif Mardin)によると、録音の準備はかなりルーズで、テーマを練習して雰囲気を作り上げる程度だったそうです[4]。一方で、ハサウェイは自身のボーカルパフォーマンスには非常に細心の注意を払い、映画監督のように自分自身に指示を出していたとのことです[4]。
パーソネル
ミュージシャン
- Donny Hathaway(ダニー・ハサウェイ) – vocals, electric piano, piano, organ, arrangements
- Phil Upchurch(フィル・アップチャーチ) – lead guitar on Side 1
- Cornell Dupree(コーネル・デュプリー) – lead guitar on Side 2
- Mike Howard(マイク・ハワード) – guitar
- Willie Weeks(ウィリー・ウィークス) – bass
- Fred White(フレッド・ホワイト) – drums
- Earl DeRouen(アール・ディロイン) – conga drums
プロデューサー
- Arif Mardin(アリフ・マーディン) :Side 1[1~4]
- Jerry Wexler(ジェリー・ウェクスラ) & Arif Mardin(アリフ・マーディン):Side 2[5~8]
エンジニア
- Ray Thompson(レイ・トンプソン) – recording engineer on Side 1[1~4]
- Tom Fly(トム・フライ) – recording engineer on Side 2[5~8]
発表時の反響
『LIVE』は、発売当時から高い評価を受けました。Rolling StoneやAllMusicなどの音楽メディアから絶賛され[6]、後にRolling Stoneの「史上最高のライブアルバム50選」で48位にランクインしています[6]。
特筆すべきこと
- 録音の質: アリフ・マーディンによるプロデュースにより、スタジオ録音に匹敵する高品質な音源が実現しました[7]。
- ベースパフォーマンス: ウィリー・ウィークスのベース演奏は特に注目に値し、「Voices Inside (Everything Is Everything)」での演奏は聴衆を熱狂させました[4][8]。
- 観客との一体感: ハサウェイは観客を巧みに取り込み、特に「You've Got a Friend」では観客とのコーラスが印象的です[10]。
- 影響力: このアルバムは、後続の多くのアーティストにとってベンチマークのような作品となりました[9]。
- 多様性: ソウル、ゴスペル、ジャズ、ポップスなど、様々なジャンルの要素が融合しています[9]。
『LIVE』は、ダニー・ハサウェイの才能を余すところなく捉えた、ソウルミュージック史に残る重要な作品です。彼の感情豊かな歌声、卓越したピアノ演奏、そして優れたバンドとの相互作用が、この作品を特別なものにしています。ハサウェイの早すぎる死を考えると、このアルバムはさらに貴重な遺産となっています[10]。
Citations:
[1] https://ontherecord.co/2023/12/07/donny-hathaway-donny-hathaway-live/
[2] https://dereksmusicblog.com/2011/12/26/donny-hathaway-donny-hathaway/
[3] https://thedemellotheorydotcom.wordpress.com/2013/02/14/liner-notes-donny-hathaway-live/
[4] https://magazine.waxpoetics.com/article/donny-hathaway-live/
[5] https://www.npr.org/sections/therecord/2016/10/17/498265985/one-transcendent-performance-that-illustrates-donny-hathaways-musical-genius
[6] https://en.wikipedia.org/wiki/Live_(Donny_Hathaway_album)
[7] https://blog.musoscribe.com/index.php/2012/08/31/album-review-donny-hathaway-live-in-performance/
[8] https://www.reddit.com/r/LetsTalkMusic/comments/bqlh99/donny_hathaway_live/
[9] https://www.bbc.co.uk/music/reviews/fnwx/
[10] https://www.rhino.com/article/live-from-your-speakers-donny-hathaway-live
アルバムレヴュー
ライブ盤として名盤の誉れ高いダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)の『ライブ(LIVE)』である。
実はこのアルバム、レコードの場合だけどA面とB面では、録音された場所も違うしプロデューサーも参加ミュージシャンも違うのである。
残念ながらCDやダウンロードが主流となった今では、ミュージシャンや制作者の、こうした意図や工夫がなかなか伝わりにくくなってしまった。
それでも意識して聴くと、その違いがよくわかるから聴き比べると面白い。
1~4曲(A面)はハリウッドのトルバドール、5~8曲(B面)はマンハッタンのビター・エンドという店でのパフォーマンス。
どちらも、錚々たるミュージシャンがホームグランドにしたアメリカの西部と東部を代表するナイトクラブだ。
トルバドールでのライブは客席との一体感のあるクラッピングや歓声、歌い声が盛大に入っていて、めちゃくちゃ高揚感がある。
あー、こういうグルーブ感はたまらない!
豊饒な音楽の空間に身をゆだねれば、すべてから解放される。
カタルシスを感じるとは、こういうことをいうのでないだろうか。
一方のビター・エンドはニューヨークという場所柄のせいか洗練された感じで、こちらの方がクリアに録音されている。
全編にわたりダニー・ハサウェイのエレピが効いている。
参加しているミュージシャンも、今じゃあ大御所といわれる人たちだ。
1~4曲のギターはフィル・アップチャーチのファンキーな切れの良いプレイ、5~8曲のギターはコーネル・デュプリーでノーブルな雰囲気。
ベースは両方ともウィリー・ウィークス。
このアルバムの最後の曲で彼は2分を超えるベースソロを聴かせているが、これは彼のベストプレイと言われている。
マーヴィン・ゲイの「What's Goin' On」、キャロル・キングの「You've Got a Friend」、ジョン・レノン「Jealous Guy」といった超名曲のスタンダードもソウルフルに聴かせる。
トラックリスト
Side 1
- What's Goin' On (Renaldo "Obie" Benson, Al Cleveland, Marvin Gaye) – 5:18
- The Ghetto (Donny Hathaway, Leroy Hutson) – 12:08
- Hey Girl (Earl DeRouen) – 4:03
- You've Got a Friend (Carole King) – 4:34
Side 2
- Little Ghetto Boy (Derouen, Eddy Howard) – 4:29
- We're Still Friends (Hathaway, Watts) – 5:12
- Jealous Guy (John Lennon) – 3:08
- Voices Inside (Everything Is Everything) (Richard Evans, Philip Upchurch, Ric Powell) – 13:47