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フリート・ウッドマック『噂』
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Fleetwood Mac(フリート・ウッドマック)のアルバム『Rumours』(噂)は、1977年2月4日にリリースされ、音楽史上最も成功したアルバムの一つとされています。

アルバムのコンセプトと制作背景

『Rumours』は、バンドメンバー間の複雑な人間関係や個人的な苦悩を反映した作品です。制作時期には、ジョンとクリスティン・マクヴィ夫妻の離婚、スティーヴィー・ニックスとリンジー・バッキンガムの破局、そしてミック・フリートウッド自身の結婚生活の崩壊が進行していました。また、メンバー全員がドラッグやアルコールに依存する状況下で制作が行われました[2][3][7]。

このような混乱の中でも、メンバーたちは音楽への情熱を失わず、それぞれの感情を楽曲に昇華させました。例えば、「Go Your Own Way」はバッキンガムがニックスとの別れを歌った曲であり、「Dreams」はニックスが同じテーマを異なる視点から表現したものです[5][7]。このように、アルバム全体が個々のメンバーの内面的な対話や感情を反映しており、それが聴衆に強い共感を与えました。

音楽性とサウンドの特徴

『Rumours』は、ロック、ポップ、フォークといったジャンルを融合させた柔軟な音楽性が特徴です。アコースティックとエレクトリック楽器を巧みに組み合わせたサウンドは、洗練されたプロダクションによって支えられています。特にリンジー・バッキンガムのギターアレンジやクリスティン・マクヴィのキーボード演奏はアルバム全体に独特の雰囲気を与えています[4][7]。

また、「Dreams」ではシンプルながらも催眠的なリズムが印象的であり、「The Chain」では全員による共同作業が生み出すダイナミズムが際立っています。「You Make Loving Fun」ではクラヴィネットという特殊な鍵盤楽器が使用されるなど、多様な楽器編成も魅力です[4][6]。

制作時のエピソード

アルバムは主にカリフォルニア州ロサンゼルスのレコード・プラントで録音されましたが、その過程は非常に困難でした。メンバー間の対立や感情的な緊張感から、一部の録音セッションでは互いに顔を合わせないよう配慮されたこともありました[3][7]。また、長時間にわたるセッションや頻繁なオーバーダビングによるテープ劣化など技術的な問題にも直面しました[9]。

プロデューサーとして関与したケン・カイラットとリチャード・ダシュットは、このような困難な状況下でも創造性を引き出す役割を果たしました。カイラットは「光を瓶に閉じ込めるような作業だった」と振り返り、その瞬間的なインスピレーションを捉えることに注力したと言います[6]。

パーソネル

  • スティーヴィー・ニックス(Stevie Nicks) - ボーカル
  • リンジー・バッキンガム(Lindsey Buckingham) - ギター、ボーカル
  • ジョン・マクヴィー(John Graham McVie) - ベース
  • クリスティン・マクヴィー(Christine McVie) - キーボード、ボーカル
  • ミック・フリートウッド(Mick Fleetwood) - ドラム

発表時の反響と評価

『Rumours』は発売直後から大きな商業的成功を収めました。全米ビルボード200で31週間1位を獲得し、全世界で4000万枚以上を売り上げています。また、「Dreams」「Go Your Own Way」「Don't Stop」「You Make Loving Fun」といったシングル曲はいずれもビルボードHot 100でトップ10入りし、「Dreams」は1位を獲得しました[2][5]。

批評家からも高く評価され、その洗練されたプロダクションやボーカルハーモニーは特に称賛されました。1978年にはグラミー賞「最優秀アルバム賞」を受賞し、『Rumours』はフリートウッド・マックの代表作として広く認識されています[2][7]。

文化的影響と遺産

『Rumours』は単なる商業的成功に留まらず、その後の音楽業界や文化にも多大な影響を与えました。その感情的な深みや革新的なプロダクション技術は、多くのアーティストやプロデューサーに影響を与えています。また、映画やテレビ番組、ストリーミングサービスなどを通じて新しい世代にも親しまれ続けています[8][10]。

さらに、このアルバムは「個人的な苦悩から芸術的傑作が生まれる」というテーマを象徴するものとして、多くの人々にインスピレーションを与えています。バンド内外での困難にもかかわらず、『Rumours』はその普遍的な魅力によって時代を超えて愛される作品となっています[7][8]。

まとめ

フリートウッド・マックの『Rumours』は、その制作背景から音楽性、そして商業的成功まで、多面的に特筆すべき要素を持つアルバムです。個人的な葛藤や苦悩が凝縮されたこの作品は、聴衆との深い共鳴を生み出し、音楽史上不朽の名作として位置づけられています。その影響力と遺産は今なお健在であり、新たな世代にもその魅力が伝わり続けています。

Citations:
[1] https://longlivevinyl.net/2017/08/25/classic-album-fleetwood-mac-rumours/
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Rumours_(album)
[3] https://dcsaudio.com/edit/revisiting-fleetwood-mac
[4] https://alevelmusictechnology.com/2024/03/05/fleetwood-mac-rumours-1977/
[5] https://people.com/music/fleetwood-mac-rumours-anniversary/
[6] https://www.musicradar.com/news/fleetwood-mac-rumours-interview-track-by-track
[7] https://vernoisnews.com/3485/opinions/fleetwood-macs-rumours-the-tumultuous-journey-towards-musical-brilliance/
[8] https://www.chaoticrhythm.com/artists/the-influence-of-fleetwood-mac's-rumours-on-modern-music
[9] https://classicalbumsundays.com/album-of-the-month-fleetwood-mac-rumours/
[10] https://woub.org/2021/07/21/the-cultural-significance-of-fleetwood-macs-rumours-43-years-later/

トラックリスト

Side A

  1. セカンド・ハンド・ニュース(Second Hand News) - 2:43
  2. ドリームス(Dreams) - 4:14
  3. もう帰らない(Never Going Back Again) - 2:14
  4. ドント・ストップ(Don't Stop) - 3:11
  5. オウン・ウェイ(Go Your Own Way) - 3:38
  6. ソングバード(Songbird) - 3:20 1976年3月3日にカリフォルニア大学バークレー校ゼルバック・ホールで録音。

Side B

  1. ザ・チェイン(The Chain) - 4:28
  2. ユー・メイク・ラヴィング・ファン(You Make Loving Fun) - 3:31
  3. アイ・ドント・ウォント・トゥ・ノウ(I Don't Want to Know) - 3:11
  4. オー・ダディ(Oh Daddy) - 3:54
  5. ゴールド・ダスト・ウーマン(Gold Dust Woman) - 4:51

アルバムレビュー

フリート・ウッドマック(Fleetwood Mac)の『』(Rumours)です。
もともとは1960年代の終わりに、ギタリストのピーター・グリーンとドラムのミック・フリート・ウッドマックが中心になってイギリスで結成されたゴリゴリのブルースバンドでした。
しかし、1977年にリリースされた本作にはそうした英国らしさやブルースらしさはほとんど感じられません。
オリジナルメンバーで残っているのはドラムのミック・フリートウッドとベースのジョン・マクヴィーのリズム隊のみでフロントのリンジー・バッキンガムとスティーヴィー・ニックスは前作の『ファンタスティック・マック』から加入。
69年に発表された強烈なジャケットデザインの『英吉利の薔薇(イングリッシュ・ローズ)』という2枚目のアルバムも持っていますが、サウンドや音楽センス、ジャケットデザインも含め全く別のグループといっていいかもしれません。
このアルバムにはサンタナがカバーしてヒットした「ブラック・マジック・ウーマン」のオリジナルが収められていることでも知られています。

『噂』は全体にリンジー・バッキンガム、スティーヴィー・ニックス、クリスティン・マクヴィーの3人のソングライターの個性がポップにまとめられたロックアルバムになっています。
おススメはやはり、なんといってもA面2曲目に収録された「ドリームス」。
彼ら唯一の全米No1ヒットの楽曲です。
スティーヴィー・ニックスの歌声は決して美声とはいえませんが、そのハスキーヴォイスは、不思議な魅力がありなんとも印象に残ります。
コケティッシュとか小悪魔というフレーズはスティーヴィー・ニックスのためにあるんじゃなかろうか?
フード付ガウンのコスチュームを着たところなんか、まるで魔法使いのようです。
イギリスの魔女がケイト・ブッシュなら、アメリカの魔女がスティーヴィー・ニックスといったところでしょうか。

「ドリームス」以外にもリンジー・バッキンガムがヴォーカルの「オウン・ウェイ」やクリスティン・マクヴィーが歌った「ドント・ストップ」がヒットしました。

メンバー内で結婚したり離婚したり、女性メンバー同士仲が悪かったりというエピソードも、いかにも、男女混成のグループらしい。
自分は当時中学生でしたがイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』と並んで、えらく売れてたなぁという印象があります。

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