南博の『白鍵と黒鍵の間に』です。
南博という1960年生まれの現役バリバリのジャズピアニストが書いたエッセイです。
この人、エッセイ書くのがうまいですねぇ。
本職の作家も嫉妬するうまさじゃないかと思う。
過不足のない端正な文章が好きです。
このエッセイのサブタイトルは-ピアニスト・エレジー銀座編-とあります。
1980年代バブル期に筆者が銀座のクラブのピアニストとして稼いでいた頃の内輪話や若かりし頃に筆者が思い抱いていた音楽に対する葛藤、そしてボストンにあるバークリー音楽大学に留学することなどがクールに描かれています。
エッセイではあるのですが、その読後感は、よくできた青春小説を読んでいるようです。
颯爽な気分にさせてくれます。
これは、筆者が夜の銀座のぬかるみのような世界にズブズブにならずに、しっかりと自分の音楽というものをもち、自分の生活というものを俯瞰の目で見つめることができた故でしょう。
登場するのは堅気とはいえない某スジの方や銀座のクラブにお勤めのお姐さまがた、そして、その世界にどっぷりとつかってしまったバンマスなど個性豊かな方々ばかり。
そうした個性的な方々との関係や彼、彼女らの生態が細やかに、しかも愛情をもって描かれています。
音楽やピアノ、演奏に関することも、たくさん書いてありますが音楽に興味のない人でも面白く読めると思います。
それにしても、山下洋輔をはじめ、ジャスをやる人にはエッセイのうまい人が多いですね。
次は彼の「ピアニスト・エレジー・バークリー編」というのもぜひ読んでみたい。
残念ながら彼のピアノは聴いたことがありませんが、機会があればどんなピアノを弾くのかぜひ聴いてみたいものです。