スティーリー・ダン『彩(エイジャ)』を聴く
スティーリー・ダン『エイジャ』
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Steely Dan(スティーリー・ダン)の6枚目のスタジオアルバム『Aja』(エイジャ)は、1977年9月23日にABCレコードからリリースされた、バンドの代表作の一つです。このアルバムは、ジャズとロックを融合させた洗練された音楽性と高度な制作技術で知られています[1][3][5]。

コンセプトと音楽性

『Aja』は、ジャズ、ブルース、ポップを融合させた独特のサウンドを特徴としています[8]。バンドのリーダーであるドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーは、より長く複雑な楽曲と編曲を追求し、約40人もの一流セッションミュージシャンを起用しました[3][5]。

アルバムのサウンドは、スムーズでジャジーな要素が強く、1970年代後半に流行したスムースポップの要素も取り入れています[7]。フェイゲンの世界観と皮肉な歌詞が、洗練された音楽と見事に調和しています[7]。

制作エピソードと参加ミュージシャン

『Aja』の制作は非常に緻密で、1年以上にわたってロサンゼルスとニューヨークの6つのスタジオで行われました[3]。Steely Danの長年のプロデューサー、ゲイリー・カッツとエンジニアのロジャー・ニコルズが制作を担当しました[5][6]。

参加ミュージシャンには、ドラマーのBernard Purdie、Rick Marotta、Steve Gadd、ギタリストのLarry Carlton、Dean Parks、Jay Graydon、ベーシストのChuck Rainey、キーボーディストのPaul Griffin、Don Grolnick、Victor Feldmanなど、当時の一流セッションプレイヤーが名を連ねています[3]。

特筆すべきは、タイトル曲「Aja」でのWayne Shorterのサックスソロや、「Peg」でのJay Graydonのギターソロなど、各楽曲で印象的な演奏が聴けることです[3][5]。

発表時の反響

『Aja』は商業的にも批評的にも大成功を収めました。アルバムはビルボードのTop LPs & Tapeチャートで3位、イギリスのアルバムチャートで5位を記録し、Steely Danの最大のヒット作となりました[5]。

第20回グラミー賞では「最優秀エンジニアリング録音賞(非クラシック部門)」を受賞し、「年間最優秀アルバム賞」と「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞」にもノミネートされました[5]。

ジャケットデザイン

アルバムカバーは、日本人モデルで女優の山口小夜子の写真が使用されています。写真家の藤井秀樹が撮影し、Oz Studiosのパトリシア・ミツイとジェフ・ウェステンがデザインを担当しました[5][10]。

黒を基調とした背景に、赤い文字で「aja」というタイトルが右上に配置されており、エレガントで印象的なデザインとなっています[8][10]。

特筆すべき点

『Aja』は、その高度な制作技術と音質の良さから、オーディオファイルの間で長年にわたって評価が高く、サウンドの基準となる作品として知られています[1][3]。

2010年には、アメリカ議会図書館により「文化的、歴史的、芸術的に重要」な作品として認定され、国家録音登録簿に選ばれました[5]。

『Aja』は、ジャズロックの傑作として、また1970年代のポップミュージックの頂点を示す作品として、音楽史に大きな影響を与えた重要なアルバムとして評価されています[1][3][5]。

Citations:
[1] https://www.thecrimson.com/column/sound-and-vision/article/2018/3/29/soundandvision-aja/
[2] https://classicalbumsundays.com/album-of-the-month-steely-dan-aja/
[3] https://www.loc.gov/static/programs/national-recording-preservation-board/documents/aja--FINAL.pdf
[4] https://elliottmag.com/all-posts/2019/6/aja-album-analysis
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/Aja_(album)
[6] https://www.last.fm/music/Steely+Dan/Aja/+wiki
[7] https://spectrumculture.com/2023/10/24/anatomy-of-a-tracklist-steely-dan-aja/
[8] https://le0pard13.com/2013/08/15/best-album-covers-aja/
[9] https://www.sessiondays.com/2015/07/1977-steely-dan-aja/
[10] https://expandingdan.substack.com/p/steely-dan-aja-cover-design-patti-mitsui

アルバムレヴュー

1977年に発表された、彼らの6枚目のアルバムです。
AORといわれる、大人のためのロックの完璧なフォーマットの1枚。
ロックにジャズやソウルのテイストを振りかけ、スノッブで晦渋な歌詞を放り込み、超一流のスタジオミュージシャンで洗練された調理をする。

もう、二十数年も聴いているレコードだけど、ロックのアルバムの中では今もって5指に入る作品です。
中でも表題曲となっている「Aja」という楽曲のスティーブ・ガッドのドラムミングとウェイン・ショーターによるサックスは圧巻。
本作の発表後、スティーリー・ダンの二人は『ガウチョ』を発表し、その後、ドナルド・フェイゲンはソロ・アルバムの『ナイト・フライ』を発表する。
これらの2作は『Aja』の流れをくむものであり、本作が下地になったと思われます。

スティーリー・ダンの音楽の良さを、ちゃんと知るためには鳴っている楽器一つひとつの音に意識を傾ける必要があります。
参加しているスタジオミュージシャンは総勢36名と超豪華。
収められているのは7曲ですが、ドラマーは6名も使っています。
一曲ごとに違うバンドで演奏を行っているようなもので、彼ら(ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカー)が一曲一曲の音作りに、そのぐらい完璧を求めている姿勢が伺えます。
二人を揶揄して完璧主義者とか変わり者とか言うミュージシャンやエンジニアが現れる所以ですね。

例えば取引先にしたらいやだなと思うクライアントがいる。
「サンプルをいくつも、持ってきてくれ」というクライアント。
「ここを変えてくれ」と果てしない要求を繰り返すクライアント。
過去にいくつもの取引実績があるのに「数社によるコンペだから頑張ってくれ」というクライアント。

スタジオミュージシャンにとってそんな、嫌な客の筆頭に挙がるのはこの時期のスティーリー・ダンに間違いないでしょう。
このアルバムの「ペグ(peg)」という楽曲の20秒程のギターソロに7名のギタリストが挑戦しボツになりました。
いずれも一流のスタジオミュージシャンとして鳴らししている連中ばかり。
ボツになったギタリストは、大層、ショックだったことだろう。
採用されたのジェイ・グレイドンというギタリストの間ではミュージシャンズ・ミュージシャンとも言われるギタリストのソロ。

また、忘れてならないのはゲーリー・カッツというプロデューサーとロジャー・ニコルスという録音エンジニアの存在。
録音も素晴らしくグラミー賞の最優秀録音賞を受賞していることもあり、エンジニアにとってもマスターピースの1枚になっています。
ちなみ、ロジャー・ニコルスはロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズのニコルズとは別の人物なので、勘違いしないように。

ジャケットのアートワークも秀逸。
アルバムジャケットのモデルは山口小夜子、カメラマンは藤井秀樹。
タイトルの『Aja』はドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーの友人の奥さんが韓国人で、彼女の名前だそうだ。
このアルバムは1977年に発表され翌年のビルボードのアルバム・ヒットチャートの5位になっています。
いやはや、洋楽が全盛の一番良い時代だった。
無駄なものも、足りないものもない、完璧な1枚です。

トラックリスト&パーソネル

1.ブラック・カウ(Black Cow) - 5:10

[パーソネル]
  • lead vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • synthesizers - ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • drums – ポール・ハンフリー(Paul Humphrey)
  • bass – チャック・レイニー(Chuck Rainey)
  • guitar – ラリー・カールトン(Larry Carlton)
  • electric piano – ヴィクター・フェルドマン(Victor Feldman)
  • Hohner Clavinet – ジョー・サンプル(Joe Sample)
  • tenor saxophone – トム・スコット(Tom Scott)
  • backing vocals – クライディ・キング(Clydie King)
  • backing vocals – ヴェネッタ・フィールズ(Venetta Fields)
  • backing vocals – シャーリー・マシューズ(Sherlie Matthews)
  • backing vocals – レベッカ・ルイス(Rebecca Louis)

2.彩[エイジャ](Aja) - 7:57

[パーソネル]
  • lead vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • police whistle – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • synthesizers - ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • guitar - ウォルター・ベッカー(Walter Becker)
  • drums – スティーヴ・ガッド(Steve Gadd)
  • bass – チャック・レイニー(Chuck Rainey)
  • guitar – ラリー・カールトン(Larry Carlton)
  • guitar – デニー・ディアス(Denny Dias)
  • piano – マイケル・オマーティアン(Michael Omartian)
  • electric piano – ジョー・サンプル(Joe Sample)
  • tenor saxophone – ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)
  • percussion – ヴィクター・フェルドマン(Victor Feldman)
  • backing vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • backing vocals – ティモシー・B・シュミット(Timothy B. Schmit)

3.ディーコン・ブルース(Deacon Blues) - 7:33

[パーソネル]
  • lead vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • synthesizers - ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • bass - ウォルター・ベッカー(Walter Becker)
  • drums – バーナード・パーディ(Bernard Purdie)
  • guitar – リー・リトナー(Lee Ritenour)
  • guitar – ラリー・カールトン(Larry Carlton)
  • guitar - ディーン・パークス(Dean Parks)
  • tenor saxophone – ピート・クリストリーブ(Pete Christliebr)
  • electric piano – ヴィクター・フェルドマン(Victor Feldman)
  • backing vocals – クライディ・キング(Clydie King)
  • backing vocals – シャーリー・マシューズ(Sherlie Matthews)
  • backing vocals – ヴェネッタ・フィールズ(Venetta Fields)

4.ペグ(Peg) - 3:58

[パーソネル]
  • lead vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • drums – リック・マロッタ(Rick Marotta)
  • bass – チャック・レイニー(Chuck Rainey)
  • solo guitar – ジェイ・グレイドン(Jay Graydon)
  • guitar - スティーヴ・カーン(Steve Khan)
  • Hohner Clavinet – ドン・グロルニック(Don Grolnick)
  • electric piano – ポール・グリフィン(Paul Griffin)
  • Lyricon – トム・スコット(Tom Scott)
  • percussion – ゲイリー・コールマン(Gary Coleman)
  • percussion – ヴィクター・フェルドマン(Victor Feldman)
  • backing vocals – マイケル・マクドナルド(Michael McDonald)
  • backing vocals – ポール・グリフィン(Paul Griffin)

5.安らぎの家(Home at Last) - 5:34

[パーソネル]
  • lead vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • synthesizers - ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • backing vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • guitar solos - ウォルター・ベッカー(Walter Becker)
  • bass – チャック・レイニー(Chuck Rainey)
  • drums – バーナード・パーディ(Bernard Purdie)
  • guitar – ラリー・カールトン(Larry Carlton)
  • backing vocals – ティモシー・B・シュミット(Timothy B. Schmit)
  • vibraphone – ヴィクター・フェルドマン(Victor Feldman)
  • piano – ヴィクター・フェルドマン(Victor Feldman)

6.アイ・ガット・ザ・ニュース(I Got the News) - 5:06

[パーソネル]
  • lead vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • synthesizers - ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • guitar solos - ウォルター・ベッカー(Walter Becker)
  • drums – エド・グリーン(Ed Greene)
  • bass – チャック・レイニー(Chuck Rainey)
  • guitar solo – ラリー・カールトン(Larry Carlton)
  • guitar - ディーン・パークス(Dean Parks)
  • vibraphone – ヴィクター・フェルドマン(Victor Feldman)
  • piano – ヴィクター・フェルドマン(Victor Feldman)
  • backing vocals – マイケル・マクドナルド(Michael McDonald)
  • backing vocals – クライディ・キング(Clydie King)
  • backing vocals – シャーリー・マシューズ(Sherlie Matthews)
  • backing vocals – ヴェネッタ・フィールズ(Venetta Fields)
  • backing vocals – レベッカ・ルイス(Rebecca Louis)

7.ジョージー(Josie) - 4:33

[パーソネル]
  • lead vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • backing vocals – ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • synthesizers - ドナルド・フェイゲン(Donald Fagen)
  • guitar solos - ウォルター・ベッカー(Walter Becker)
  • drums – ジム・ケルトナー(Jim Keltner)
  • bass – チャック・レイニー(Chuck Rainey)
  • guitar – ラリー・カールトン(Larry Carlton)
  • guitar - ディーン・パークス(Dean Parks)
  • percussion – ジム・ケルトナー(Jim Keltner)
  • backing vocals – ティモシー・B・シュミット(Timothy B. Schmit)
  • electric piano – ヴィクター・フェルドマン(Victor Feldman)
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