ヴァニラ・ファッジ(Vanilla Fudge)の『キープ・ミー・ハンギング・オン』(Keep Me Hangin' On)である。
ヴァニラ・ファッジは1960年代半ばぐらいから活躍したアメリカのロックバンド。
アートロックやサイケデリックロックの先駆けとなった4人組のグループだ。
最近は徹夜で飲むことは「まったく」といっていいくらい、なくなったが明け方近くまで飲んでいると、いつも思い出すのはプロコルハルムの『青い影』とこのヴァニラ・ファッジの『キープ・ミー・ハンギング・オン』なのである。
アルバムのタイトルにもなっている『キープ・ミー・ハンギング・オン』と言う楽曲のオリジナルは、ダイアナ・ロスも在籍していた3人組ガールズグループのシュープリームス。
オリジナルの楽曲はモータウンサウンドを代表するようなリズミカルでポップなものだが、ヴァニラ・ファッジのアレンジはオリジナルのサウンドを思わせるものはまったくなく、ねっとりとしたからみつくようなサウンドで、まったくの別ものになっている。
でも、これがすごくカッコいい。
昔、飲みにいっていたバーのようなスナックのような店には古びたジュークボックスが置いてあって、夜が白々と明けるころになると、コインを入れてこうしたロックをよく聴いていた。
なぜか夜明けのバーにはオルガンの入った、サイケなロックがよく似合う。
眠くて朦朧とした頭と疲れたハートに、憂いを含んだオルガンの音色は心地よくしみるのである。
ところで、このヴァニラ・ファッジには後の「ベック・ボガート・アンド・アピス」でギタリストのジェフ・ベックに引き抜かれたベースのティム・ボガートとドラムのカーマイン・アピスが在籍している。
バンドのヴァニラ・ファッジという名前は、当時、アメリカで販売されていたアイスクリームの商品名だとか…。
このアルバムに収められている曲はすべて誰かが歌った曲のカバーなのだが、原曲のイメージはなく彼らのものになっている。