
『Wind & Wuthering』(ウインド&ワザリング、邦題:静寂の嵐)は、イギリスのプログレッシブ・ロックバンド、Genesis(ジェネシス)の8作目のスタジオ・アルバムです。1976年12月17日にリリースされ、ギタリストのSteve Hackettが参加した最後のアルバムとなりました[3]。
コンセプトと音楽性
このアルバムは、幻想と幻滅、失われた愛と無垢をテーマにしています[2]。タイトルはエミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』から着想を得ており、秋の雰囲気を漂わせています[4]。
音楽的には、プログレッシブ・ロックの要素を色濃く残しつつ、よりコンパクトで洗練された楽曲構成へと進化しています[6]。クラシカルな要素、フュージョン風のドラミング、ポップ寄りの楽曲が絶妙なバランスで融合しています[6]。
サウンドの特徴
アルバムは、エレクトリックなロックとアコースティックなバラードのバランスが巧みに調整されています[2]。Tony Banksのキーボード、Steve Hackettのギター、Mike Rutherfordのベースとリズムギター、Phil Collinsのドラムスが見事に融合し、豊かなサウンドスケープを作り出しています[1][3]。
特筆すべきは、Moog Taurusというフット操作のアナログシンセサイザーの使用で、ドローン効果を生み出しています[3]。
制作時のエピソード
アルバムはオランダのHilvarenbeekにあるRelight Studiosで録音されました。これは、ジェネシス、初の海外レコーディングでした[3]。税金対策のため、海外での録音を選んだそうです[4]。
制作中、Steve Hackettは自身の楽曲アイデアが採用されないことに不満を感じていました。Tony Banksの楽曲が多く採用されたことが、後のHackettの脱退につながったとも言われています[3][1]。
参加ミュージシャン
- フィル・コリンズ(Phil Collins) - ボーカル、ドラムス、パーカッション
- スティーヴ・ハケット(Steve Hackett) - エレクトリックギター、ガットギター、12弦ギター、カリンバ、オートハープ
- マイク・ラザフォード(Mike Rutherford) - ベース、ベース・ペダル、12弦ギター
- トニー・バンクス(Tony Banks) - ピアノ、エレクトリックピアノ、ハモンドオルガン、メロトロン、シンセサイザー
発表時の反響
アルバムは商業的に成功し、イギリスでは7位、アメリカでは26位を記録しました[7]。しかし、パンク・ロックの台頭により、ジェネシスの複雑な楽曲構成は時代遅れと見なされる面もありました[7]。
ファンの間では、秋の季節に聴くアルバムとして親しまれています[4]。多くのリスナーにとって、70年代のジェネシスの最高傑作の一つと評価されています[5]。
特筆すべき点
- 『Eleventh Earl of Mar』や『One for the Vine』などの壮大なプログレッシブ・ロック曲[5]。
- 『Your Own Special Way』は、後のポップ路線を予感させる楽曲[5]。
- 『Blood On The Rooftops』は、Steve HackettとPhil Collinsの共作で、Genesisの隠れた名曲と評されています[4]。
- 『Afterglow』は、Tony Banksが即興で作曲したという逸話があり、ライブでの人気曲となりました[7]。
- インストゥルメンタル曲『Unquiet Slumbers for the Sleepers…』と『…In That Quiet Earth』は、バンドの技術的な卓越さを示しています[7]。
『Wind & Wuthering』は、ジェネシスのプログレッシブ・ロックとしての最後の輝きを放つアルバムであり、同時に彼らの未来を予感させる作品でもありました。複雑な楽曲構成と情感豊かな演奏が融合した本作は、バンドの過去と未来を繋ぐ重要な架け橋となっています[7]。
Citations:
[1] https://www.loudersound.com/features/genesis-wind-wuthering
[2] http://www.donaghue.karoo.net/music/reviews/wind_and_wuthering.htm
[3] https://en.wikipedia.org/wiki/Wind_&_Wuthering
[4] https://www.genesis-news.com/article/genesis-wind-wuthering-cd-review/
[5] https://www.reddit.com/r/Genesis/comments/dqqaz2/alright_guys_lets_talk_about_wind_wuthering/
[6] https://www.genesis-news.com/c-Genesis-Wind-Wuthering-CD-review-s392.html
[7] https://genesis-band.com/album/wind-wuthering-1976-genesis/
[8] https://www.progarchives.com/album.asp?id=1512
[9] https://www.reddit.com/r/Genesis/comments/1233rlj/what_is_the_classic_genesis_style_and_sound/
アルバム・レヴュー
ジェネシス(Genesis)の『静寂の嵐』です。
原題は『Wind & Wuthering(ウインド&ワザリング)』。
本作はエミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』にインスパイアされているとか。
ちなみにエミリー・ブロンテの『嵐が丘』の原題は『Wuthering Heights』。
ことにB面の「Unquiet Slumbers for the Sleepers...」と「...In That Quiet Earth」という楽曲は、小説の最後の一文からタイトルがつけられています。
どうも「Wuthering」単語にはイギリスの荒涼としたイメージがつきまとうみたいですが、山形の11月のどんよりとした天気にもピッタリの1枚です。
本作は1976年に発表された彼らの8枚目のアルバム。
それまで、リーダーだったピーター・ガブリエルがグループを脱退して2枚目のアルバムになります。
また、ギタリストのスティーヴ・ハケットが参加した最後のスタジオアルバムでもあります。
プログレッシブロックの好きな人にはピーター・ガブリエルが在籍していた頃の『怪奇骨董音楽箱』、『フォックストロット』、『月影の騎士』といった作品のほうがウケはよいようですが、自分としてはこれがベスト。
楽曲やアレンジはメランコリックであり、かつ美しいメロディ、クラシック音楽のような複雑さと格調の高さがあります。
荘厳さを保ちながらも躍動感あふれるロックに仕上がっています。
本作は、前作『トリック・オブ・ザ・テイル(A Trick of the Tail)』の成功を受けて制作されました。
バンドはオランダのヒルヴァレンベークにあるRelightスタジオでレコーディングを行い、これは彼らにとって初めての海外での録音でした。
このアルバムの制作中には、ハケットとキーボーディストのトニー・バンクスとの間で創作上の軋轢が生じました。
ハケットは自身の楽曲が採用されないことに不満を抱いており、これが彼のバンド脱退の一因となります。
ジャケットはイラストを描いたコリン・エルジーとヒプノシスという業界では有名なイギリスのデザイン・グループと手がけています。
自分の人生の中でも、かなり聴き込んだ1枚で、今でも時々、聴いています。
そういう意味では聞き飽きのしないアルバムですね。
中でも、B面2曲目の「ブラッド・オン・ザ・ルーフトップス」という、意味のよくわからないタイトルの楽曲は、何度聴いたかわかりません。
ちなみに、この曲は美しいメロディーとは裏腹に詩の内容は「テレビのニュースの退屈さと単調さ、そしてニュースを見ているときに時々伴うあざ笑うような嫌悪感」をテーマにした曲だとか。
スティーブ・ハケットのガットギターの美しい旋律で始まり、ストリングスやオーボエのような管楽器も効いていて、バロックの香りのするメロディアスなクラシックのような楽曲です。
ハケットはソロのになってからもこの楽曲はよく演奏しているようです。
高校生の頃、エレキギターをやっているロック好きの友達に薦められて購入しました。
そういえば、彼は『キャメル』といったプログレッシブロックのバンドも推してました。
買ったのはミュージック昭和という山形を代表する? レコードと楽器を取り扱っているショップです。
この店、今は移転してしまいましたが昔は山形駅近く、すずらん街という通りの現在、サンルート山形というホテルになっている1階にテナントとして入っていました。
しょっちゅう入り浸っては長い時間、レコードやエレキギターを眺めていたことを想い出します。
最初にエレキギターを手に入れたのもこの場所でした…。
トラックリスト
Side A
- Eleventh Earl of Mar(イレヴンス・アール・オブ・マー) - 7:39
- One for the Vine(ワン・フォー・ザ・ヴァイン) - 9:59
- Your Own Special Way(ユア・オウン・スペシャル・ウェイ) - 6:15
- Wot Gorilla?(ウォット・ゴリラ?) - 3:12
Side 2
- All in a Mouse's Night(オール・イン・ア・マウシズ・ナイト) - 6:35
- Blood on the Rooftops(ブラッド・オン・ザ・ルーフトップス) - 5:20
- Unquiet Slumbers for the Sleepers...(まどろみ) - 2:27
- ...In That Quiet Earth(静寂) - 4:49
- Afterglow(アフターグロウ) - 4:12