
パット・メセニー(Pat Metheny)の『フロム・ディス・プレイス(From This Place)』です。
リリースは2020年2月。
通しで聴いた感想は、初期のアルバムの瑞々しいニュアンスもあるし、『スティル・ライフ』や『レター・フロム・ホーム』の頃のようなダイナミックな感じもうかがえる。
そして、最近の彼のアルバムらしさもある。
そうした意味で、パット・メセニーの集大成だなと思った。
いつもながら、いわゆる「ジャズらしいか」と問われれば、んーと唸ってしまうが、パット・メセニーらしいアルバムであるのは間違いない。
1曲目の「アメリカ・アンディファインド」は13分22秒という大作。
複雑で緊張感のあふれる構成。
ダイナミックかつスケール大きさをを感じる。
昔の彼のアルバムのようなアメリカらしさがすごく表れている。
踏切や列車の走る音を模した音も入っていて、「パット・メセニーって、やっぱり列車が好きなんだな」と……。
ギレルモ・シムコックのピアノはライル・メイズより、ドライな感じで今っぽいプレイ。
ハリウッド・スタジオ交響楽団のストリングスが効いてるあたりは、最近のアルバムっぽい雰囲気。
なんか、映画音楽のメインテーマのようとも思える。
2曲目の「ワイド・アンド・ファー」は盟友といってもいいアントニオ・サンチェスのドラムから入るパット・メセニーの中期のような感じの楽曲。
勢いのある元気な楽曲で、なんか、懐かしさを覚える。
3曲目の「ユー・アー」は静かに始まる最初のピアノのリフをモチーフにし、複雑に展開していく佳曲。
自分は好きだなぁ。
4曲目の「セイム・リヴァー」はギターの音色が昔のメセニーを彷彿させる。
ストリングスが入っていなければ、昔のパット・メセニーってこんな感じだったように思う。
先日、中期のアルバムでは一緒にプレイしていたピアニストのライル・メイズが亡くなってしまった。
当時のアルバムにはライル・メイズの影響がかなりあったように思える。
彼と一緒のプレイが、もう、聴けないのは残念なことだ。
パット・メセニーを聴くと、いつも思うのは単にギタリストというよりは、アンサンブルで聴かせるプロデューサーやコンポーザーといったポジションのミュージシャンなんだなぁと。
本作も、そうしたことを強く感じさせるようなアルバムだった。
ちなみに、本作にはミシェル・ンデゲオチェロ(ヴォーカル)、グレゴア・マレ(ハーモニカ)、ルイス・コンテ(パーカッション)というスペシャル・ゲストも参加している。
トラックリスト
- アメリカ・アンディファインド(America Undefined) - 13:22
- ワイド・アンド・ファー(Wide and Far) - 8:26
- ユー・アー(You Are) - 6:13
- セイム・リヴァー(Same River) - 6:43
- パスメーカー(Pathmaker) - 8:19
- ザ・パスト・イン・アス(The Past in Us) - 6:23
- エヴリシング・エクプレインド (Everything Explained) - 6:52
- フロム・ディス・プレイス(From This Place) - 4:40
- シックスティ・シックス(Sixty-Six) - 9:38
- ラヴ・メイ・テイク・アホワイル(Love May Take Awhile) - 5:57
パーソネル
- ギター、キーボード(キーボードも弾いてるのか!):パット・メセニー(Pat Metheny)
- ドラム:アントニオ・サンチェス(Antonio Sanchez)
- ベース:リンダ・メイ・ハン・オ(Linda May Han Oh)
- ピアノ:ギレルモ・シムコック(Gwilym Simcock)
- ヴォーカル:ミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)
- ハーモニカ:グレゴア・マレ(Gregoire Maret)
- パーカッション:ルイス・コンテ(Luis Conte)
- 指揮:ジョエル・マクニーリー(Joel McNeely)&ハリウッド・スタジオ交響楽団