
ボストン(BOSTON)のデビューアルバム『幻想飛行』(BOSTON)は、1976年8月25日にEpic Recordsからリリースされた、アメリカのロックバンドBOSTONの記念碑的な作品です[1]。このアルバムは、バンドのギタリストであるトム・ショルツが中心となって制作し、その独特な「BOSTONサウンド」を確立しました。
音楽性とサウンドの特徴
BOSTONのサウンドは、以下の要素によって特徴づけられています:
- 大きくメロディアスなフックと重厚でクラシカルなギターパート[2]
- 洗練されたプログレッシブロック風な構造と重厚なロックンロールの融合[1]
- アコースティックギターとエレキギターのバランス[1]
- 美しいボーカルハーモニー[1]
トム・ショルツは、クラシック音楽から影響を受け、シンフォニーやコンチェルトで使用される様々なダイナミクスや多重楽器のハーモニックレイヤリングを取り入れました[2]。この手法により、BOSTONは他のプログレッシブロックバンドよりも効果的にクラシック音楽とロックの融合を実現しました[2]。
制作エピソード
アルバムの制作過程は非常に興味深いものでした:
- ショルツは1969年頃から楽曲の制作を開始し、最初の曲「Foreplay」を書きました[7]。
- 多くのレコード会社から拒否されましたが、Scholzは諦めずに自宅のスタジオで制作を続けました[1][7]。
- Epic Recordsと契約後も、Scholzは自宅スタジオでデモテープを完成させ、プロデューサーのJohn Boylanと協力して、レーベルに気付かれないようにアルバムの大部分を自宅で録音しました[3][5]。
- アルバムの90%は元のデモテープを改良したもので、1曲「Let Me Take You Home Tonight」のみがLAで録音されました[3]。
参加ミュージシャン
主な参加ミュージシャンは以下の通りです:
- トム・ショルツ(Tom Scholz) :ギター、キーボード、その他の楽器
- ブラッド・デルプ(Brad Delp): ボーカル
- ジム・マスデア(Jim Masdea):ドラム、初期のデモ録音[3]
Scholzは楽器のほとんどを自身で演奏し、録音とエンジニアリングも担当しました[1]。
発表時の反響
『BOSTON』は発売直後から大きな成功を収めました:
- クリーブランドで最初にブレイクし、翌週には392のラジオ局で放送されました[1]。
- 1976年10月にゴールド認定を受け、30日以内にさらに50万枚を売り上げました[1]。
- 1977年1月までに200万枚を売り上げ、ロック史上最速で売れたデビューアルバムの1つとなりました[1]。
- 批評家からも好評を得て、グラミー賞の新人賞にノミネートされました[1]。
特筆すべき点
- 『BOSTON』は、ポップの即時性とプログレッシブロックの緻密さを兼ね備えた、独特なサウンドを持つアルバムとして評価されています[4]。
- アルバムの制作には7年もの歳月がかかり、Scholzの完璧主義と創造性が結実しました[7]。
- 「More Than a Feeling」をはじめとする楽曲は、強力なギターリフと美しいハーモニーで多くのリスナーを魅了しました[2][4]。
- このアルバムは、ロック史上最も成功したデビューアルバムの1つとなり、その後のロックミュージックに大きな影響を与えました[1][6]。
BOSTONの『BOSTON』は、その独特なサウンドと制作過程、そして商業的成功により、ロック音楽史に残る重要な作品となりました。ショルツの技術的な才能と音楽的なビジョンが結実したこのアルバムは、今もなお多くの音楽ファンに愛され続けています。
トラックリスト
Side A
- モア・ザン・ア・フィーリング(More Than A Feeling) - 4:46
- ピース・オブ・マインド(Peace Of Mind) - 5:02
- フォープレイ~ロング・タイム(Foreplay/Long Time) - 7:47
Side B
- ロックンロール・バンド(Rock & Roll Band) - 3:00
- スモーキン(Smokin') - 4:20
- ヒッチ・ア・ライド(Hitch A Ride) - 4:12
- サムシング・アバウト・ユー(Something About You) - 3:48
- レット・ミー・テイク・ユー・ホーム・トゥナイト(Let Me Take You Home Tonight) - 4:44
Citations:
[1] https://en.wikipedia.org/wiki/Boston_(album)
[2] https://altrockchick.com/2023/01/22/boston-boston-album-classic-music-review/
[3] https://www.loudersound.com/features/how-boston-flew-so-high-and-fell-so-far
[4] https://observer.com/2016/08/bostons-debut-album-isnt-a-guilty-pleasure-its-one-of-the-best-records-ever/
[5] https://forums.stevehoffman.tv/threads/boston-debut-album-and-appreciation.1167916/
[6] https://www.britannica.com/topic/Boston-American-rock-group
[7] https://www.loudersound.com/features/boston-tom-scholz-first-album-interview
アルバムレビュー
最近では、滅多に聴くこともなくなったけど、このアルバムは中学生の頃から含めるといったい何度、聴いただろう。
ノリのいいエイトビートのバッキングにメロディアスなギターソロをフューチャーした厚いサウンド。
一時期、このエレキギターのスペイシーなサウンドには、本当に虜になった。

アルバムのタイトルどおり、エフェクターによって造られた勢いよく宇宙をへ飛んでいくような浮遊感のある気持ちのよいエレキギターのサウンドとそれを引き立てるアコースティックギター。
エコーをきかせたハイトーンのヴォーカルと美しいコーラス。
それらが多重録音によって厚いアンサンブルを奏でる。
生の音ではない、創られた音の完成形の一つのカタチというものをここにみることができる。
全体に、スペイシーな広がりのある厚いサウンドと美しくメロディアスで緩急の効いたテイストの楽曲で構成されているのがこの作品の特徴だ。
実際に聴くと信じられないが、このアルバムにはコンピュータやシンセサイザーは使っていないというクレジットが入っている。
このあたりが、このバンドのリーダーでマサチューセッツ工科大(MIT)出身という異色の経歴をもつトム・ショルツのこだわりなのだろう。
A面、1曲目の「宇宙の彼方に(More Than A Feeling)」は12弦ギターの美しいアルペジオのイントロからキャッチーなメロディーとエイトビートへ変わるノリのよい楽曲。
そして、壮大なスケール感のパイプオルガンのソロから、テンポのよいロックンロールの「Foreplay~Long Time」へと展開していく。
B面も同じようなテイストの楽曲が続き、捨て曲なし!
ボストンといえばハーヴァードやマサチューセッツ工科大(MIT)などの大学生の町。
それと、ロバート・B・パーカーをはじめとした探偵小説の舞台になった町。
ボストンへ行ったならクラムチャウダーとフライド・クラムは一度食べてみたいと思っているのだが…。