リッキー・リー・ジョーンズ(Rickie Lee Jones)の『パイレーツ(Pirates)』です。
1981年にリリースされた彼女の3枚目のアルバムですね。
この人の音楽ってオンリーワンですよねぇ。
リトル・フィートのギタリスト、ローウェル・ジョージに見いだされデビューしたわけですが、そのときに矢野顕子の歌を聴かされ今のようなけだるい、ひとくせある歌い方になったというような話を昔、ラジオかなんかで聞いたことがあります。
時には純真無垢の少女のような、時には年期の入ったスナックのお姉さんのようなすれっからしの印象があります。
か弱そうだけど強い。
かわいいけど肝が据わっている。
ハッピーだけど哀しい。
前作の『浪漫』もそうですが、彼女の歌にはそんなことを感じさせる何かがあります。
ホント、心に沁みます。
家出、アルコールやドラッグ、妊娠中絶。
絵に描いたような転落パターンですが、こうした生活を送りながら、クラブで歌っているところをスカウトされスターになっていくというのは、まるで映画のようです。
こうしたデビューまでの決してハッピーとはいえない経験が、ちょっと一筋縄ではいかない感のオーラを発するミュージシャンにさせたのでしょうか?
ついでながら、この作品を発表する数年前までミュージシャンのトム・ウェイツと付き合っていたのは有名な話。
6曲目に収録されている「ラッキー・ガイ」はトム・ウェイツのことを歌った作品だとか。
それにしてもサポート・ミュージシャンの豪華なこと…。
プロデューサーがレニー・ワロンカーという大物がやったおかげでしょうか?
ギターにはスティーブ・ルカサー、バジー・フェイトン、ベースはチャック・レイニー、ドラムはスティーブ・ガッド、キーボードにはニール・ラーセン、ホーンセクションにはランディ・ブレッカー、デイヴィッド・サンボーン、シンセサイザーにはドナルド・フェイゲンの名前も見えます。
ちなみにアレンジには、AORの元祖とも言われるニック・デカロです。
このメンツを見ると思いっきりサウンド志向でミュージシャンがバリバリと弾いてる姿を期待してしまいますが、そのプレイは概ね控えめなものです。
これぞ、サポートミュージシャンの真骨頂。
そういえばジャケットの写真はブラッサイというピカソやマチスとも親交のあったハンガリー出身の写真家が撮ったものです。
ブラッサイは夜のパリで娼婦や恋人たちを撮った作品を多く残しました。
そういう意味ではアートワークも一流です。
トラックリスト
- 心のきずな(We Belong Together) - 5:04
- リヴィング・イット・アップ(Living It Up) - 6:24
- スケルトンズ(Skeletons) - 3:39
- スロー・トレイン・トゥ・ペキン(Woody and Dutch on the Slow Train to Peking) - 5:18
- パイレーツ(Pirates[So Long Lonely Avenue]) - 3:55
- ラッキー・ガイ(A Lucky Guy) - 4:19
- ウェスタン・スロープ(Traces of the Western Slopes[R. L. Jones, Sal Bernardi]) - 7:59
- 帰還(The Returns) - 2:20
1981年作品