結局はブライアン・フェリーなんだな
ロキシー・ミュージック(Roxy Music)の『アヴァロン(Avalon)』です。
これまでのロキシー・ミュージックとは一線を画す作品であり、彼らの最後のオリジナルアルバム。
当時、ロキシー・ミュージックのメンバーはリーダーでヴォーカルを担当するブライアン・フェリーのほかにはギターのフィル・マンザネラ、サックス担当のアンディ・マッケイの三人となっていた。
本作はリーダーのブライアン・フェリーの美学と価値観で彩られた唯一無二の音楽である。
そういう意味では、はたして、これをブライアン・フェリーでなくロキシーミュージックの作品と言っていいのだろうか? と躊躇してしまうが傑作であるのは間違いない。
この後に発表されるブライアン・フェリーのソロアルバムの初期のいくつかは、明らかにこのアルバムの延長線上にある。
ゴージャスで退廃的なサウンド
アメリカのミュージシャンには、これは作れないだろうなと思わせるブルースの匂いを感じさせない幻想的で優雅なサウンド。
全体的にエコーが多用され、様々な楽器の音が効果音的に使われているゴージャスで退廃的なサウンドが、決してうまいとはいえないブライアン・フェリーのふわふわとした浮遊感のあるヴォーカルとマッチしている。
こうした、こねくり回された作品で忘れてはならないのはプロデューサーのレット・デイヴィスとエンジニアのボブ・クリアマウンテンの存在だ。
レット・デイヴィスは初期にロキシー・ミュージックに参加していたブライアン・イーノやキング・クリムゾンなどのアルバムも手掛けている。
また、ボブ・クリアマウンテンはミックス・エンジニアとして数えきれないぐらいのロックの名盤に関わっている。
他のメンバーも存在感を発揮
フィル・マンザネラのギターも全曲にわたり味噌汁のだし、いや、スープのブイヨンのように利いている。
特筆すべきは最後に収められているタラ(TARA)という2分弱のインストゥルメンタル。
愁いのあるアンディー・マッケイのオーボエ(ソプラノサックスにも聴こえるが、クレジットにはオーボエとあるので、そうなのでしょう)の音色とメロディー。
そして最後は波の音がフェードアウトしていく。
アーサー王伝説がモチーフ
アヴァロンとは古代ウェールズ語で「林檎」を意味しアーサー王伝説に登場する楽園の島。
自身の血筋であるモルドレッドの謀反により重傷を負ったアーサー王が傷を癒すために、この地にわたり最期を迎えたという。
そうした世界観はイギリス、あるいはケルト的。
ジャケットに写った甲冑を着た後姿の人物は、後にブライアン・フェリーの奥さんになる女性だとか…。
トラックリスト
- 夜に抱かれて(More Than This) - 4:30
- ザ・スペース・ビトウィーン(The Space Between) - 4:30
- アヴァロン(Avalon) - 4:16
- インディア(India) - 1:44
- 我が胸のときめきを(While My Heart Is Still Beating) - 3:26
- ザ・メイン・シング(The Main Thing) - 3:54
- テイク・ア・チャンス・ウィズ・ミー(Take A Chance With Me) - 4:42
- トゥ・ターン・ユー・オン(To Turn You On) - 4:16
- トゥルー・トゥ・ライフ(True To Life) - 4:25
- タラ(Tara) - 1:43
パーソネル
- ブライアン・フェリー(Bryan Ferry):vocals, keyboards
- アンディ・マッケイ(Andy Mackay):sax, oboe
- フィル・マンザネラ(Phil Manzanera):guitars
- ニール・ハバード(Neil Hubbard):guitar
- アラン・スペナー(Alan Spenner):bass
- ニール・ジェイソン(Neil Jason):bass
- アンディー・ニューマーク(Andy Newmark):drums
- リック・マロッタ(Rick Marotta):drums
- ポール・キャラック(Paul Carrack):keyboards
- ジミー・メイレン(Jimmy Maelen):percussion
- カーミット・ムーア(Kermit Moore):cello
- フォンジ・ソーントン(Fonzi Thornton):background vocals
- Yanick Etienne:background vocals